69 (sixty nine)
http://www.69movie.jp/index.html
監督:リ・サンイル
脚本:宮藤官九郎
原作:村上龍
出演:妻夫木聡 安藤政信 金井勇太 太田莉菜
(2004 日)




 1969年は、ベトナム戦争、ヒッピー、ラブ&ピース、そしてあのウッドストックフェスティバルが開かれた年である。
"69"は、そんな時代に青春まっただ中だった村上龍の自伝的な同名の小説を映画化したものだが、監督のリ・サンイルも脚本の宮藤官九郎も'69年を知らない世代である。
シナリオのセンスとノリの良い博多弁が登場人物の魅力的なキャラクターを引き立て、それらをまとめる監督の才能と勢いが映画全体に心地よいスピードとリズムを加えている。
それはやはり活きの良いスタッフならではのものなのかも知れない。

 舞台は1969年の長崎佐世保。
北高校3年のケンは、アダマ、イワセとともにフェスティバルの開催を計画する。
映画とロックと演劇が一体となったフェスティバルだ。
しかしケンの真の動機は、映画の撮影に女優として憧れのレディ・ジェーン(英語劇部の美少女、松井和子)をむかえ、それを通して彼女と親しくなることだった。
アダマは「それフェスティバルやのうて松井祭りばい」と、ケンを批判するが、アダマの動機もまた「何かを強制される集団は醜い」という純粋なようで、いまひとつわけの解らない思いつきだった。

 フェスティバル計画中、彼等は北高全共闘メンバーを巻き込み、その場のノリでバリケード封鎖をやることになる。
それも、もともとは「うち、デモやらバリケードやらする人、好いとるもん」というケンの妄想の中でふくれあがったレディ・ジェーンの一言が始まりだった。
さすがにびびって止めようとするイワセに、アダマまでが「よかやっか、バリ封もフェスティバルも面白かけんやるとやろ?」と言い出し、その言葉に吹っ切れたかのように3人はバリ封へと突っ走る。
このアダマの一言「面白く生きる」がこの映画を象徴しているみたいだ。
時々死ぬほど怖い思いもするけど、教師に殴られたりもするけど、でも楽しく生きてるぞ〜、ざまあみろ…と、そんな感じだ。。
決して退廃的な意味じゃなくて、「面白い」に対する一生懸命さ、どん欲さは、その後も原作者村上龍氏の生き方に続いているように思う。
そして最近の著書「13歳のハローワーク」にもあるように『好きなことを職業にする』というポリシーにも繋がっている。

 映画の中で使われる細かい設定に、当時のものが色々と使われているのも楽しい。
ケンはマジソンバッグで通学し、テレビではタイガースの『花の首飾り』が流れ(ケンの担任が岸部一徳だったり)、11PMが放送され、会話の中にはドノヴァン、ディラン、ツェッペリン、サイモン&ガーファンクルなどが出てくる。
クリームの曲が随所に使われていて、ケンの所属するバンドも劇中でSunshine Of Your Loveを演奏している。
これらの曲は映像にピッタリはまっていてワクワクするようなかっこいい躍動感を生んでいる。
むしろクリーム世代には思いつかない画面との組み合わせかも…。

 もう青春をすぎてしまった人は高校生だった頃に帰って説教くさい大人の視点を排除し、バリ封やフェスティバルをケン達と一緒に満喫することをお薦めする。
そうすれば、もう、とにかく面白くて、始めから終わりまで、笑いっぱなし…で暑さを吹き飛ばせるだろう。

 それから'69年世代には、面白いだけじゃなくてたまらなく懐かしい、切ない映画でもあるんじゃないかな。
2004/7/28
[movietop]

==========================以下少しだけネタバレ========================









原作を読んだ方なら、バリ封のクライマックス、あの「うんこ事件」は映画ではどうなってるのか気になるでしょう。
期待(?)以上にリアルで、原作同様印象的な、名場面にしあがっていますよ。
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