オール・アバウト・マイ・マザー
ALL ABOUT MY MOTHER
Todo sobre mi madre
http://www.sonypictures.com/classics/allaboutmymother/

監督・脚本 : ペドロ・アルモドバル
製作 : アグスティン・アルモドバル
音楽 : アルベルト・イグレシアス

出演 : セシリア・ロス(マヌエラ) マリサ・パレデス(ウマ・ロッホ)
    カンデラ・ベニャ(ニナ)  アントニア・サン・ファン(アグラード)
    ペネローペ・クルス(シスター・ロサ) エロイ・アソリン(エステバン)
    トニ・カント(ロラ)

(1999  スペイン)

 母一人子一人のマヌエラと息子エステバン。
エステバンは、いつもノートと鉛筆を持って、そこにその時々の思いを書き付けているような小説家志望の青年だった。
二人は仲の良い母と息子だったが、彼の父親についてマヌエラは一度も息子に語ったことが無く、感受性の強いエステバンは母親の気持ちを察しながらも、父について知りたいと心から望んでいた。
そしてエステバンの17歳の誕生日、二人で「欲望という名の電車」の舞台を見に行った時に、マヌエラは初めて息子に父のことを話す約束をする。

今夜、家に帰ったら…と。

しかし、劇場の出口で、その夜の芝居に出演していた大女優ウマ・ロッホにサインをもらおうとしていた息子エステバンは、マヌエラの目前で事故死してしまうのだ。

その夜から、マヌエラの生活は一変した。
臓器移植コーディネーターの仕事を辞め、エステバンの存在すら知らないでいる父親(元夫)ロラに、息子の死を知らせるためバルセロナへ旅立ったのだ。

最愛の子供を失った母親の苦しみ、若かった頃の過ちや輝く思い出、そして思い出の演劇「欲望という名の電車」を背景に、女の友情が実に細やかに暖かく描かれていく。
ペドロ・アルモドバルという男性が、何故こんなに女性について踏み込んだ描き方が出来るのか不思議に思っていたら、彼はゲイなのだそうだ。
ナットクである。
あらゆる年齢の、あらゆる過去を持つ、そして現在の苦しみと立ち向かう女性達が、生き生きと人生を歩んでいる姿が見事に表現されている。
その勇敢で、力強く、あまりに優しく、健気な彼女たちに、映画を通して生きるエネルギーを貰える。

大女優のウマ、性倒錯の娼婦アグラード、父親が見つからないまま一人で子供を産もうとしているシスターロサ。
彼女たちがマヌエラの部屋に集まり、お酒とアイスクリームでお喋りをしながら、話題は仕事のことからフェラチオのことまで大笑いで盛り上がるシーンがとても素敵だった。
こんなふうにして、何もかも忘れて時を過ごした女性達は、エネルギーを回復し充電して、また明日から地に足をつけて生きていく。
きっと、多くの女性が共感する場面だ。

誰も彼も並々ならぬ波乱に富んだ人生。
決して逃げることなく、それに体当たりしていく、強くてか弱き彼女たち一人一人が、愛おしくてたまらなくなった。

(2005/6/29)
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