監督: トラヴィス・ファイン
脚本: トラヴィス・ファイン ジョージ・アーサー・ブルーム 音楽: ジョーイ・ニューマン 音楽監修: PJ・ブルーム 出演: アラン・カミング (ルディ・ドナテロ) ギャレット・ディラハント (ポール・フラガー) アイザック・レイヴァ (マルコ・ディレオン) フランシス・フィッシャー (マイヤーソン判事) グレッグ・ヘンリー (ランバート) クリス・マルケイ (州検察官ウィルソン) ドン・フランクリン (ロニー・ワシントン(黒人の弁護士)) ジェイミー・アン・オールマン (マリアンナ・ディレオン(マルコの母)) テレビの情報番組で、"号泣する映画"として紹介されていたこの作品。 単館上映の上、人気があってたまたま行けた日は混んでいて立ち見で諦め・・・と、なかなか見る機会が無かったのだがついに先日、まさしく号泣しながら鑑賞してきた。 ポスターの男性・・・主人公のルディを演じたアラン・カミングの笑顔・・なんと優しいのだろう。 以前からずっとそう思っていたのだが、観終わった今、この写真はこの作品のルディのイメージそのままだ。 まるで母親のような慈愛にあふれた表情でマルコを抱く素敵なポスターだ。 この物語は実際に有ったストーリーがベースになっていて、そのストーリーを書いたのがルディのモデルとなった男性の隣人。 そしてそれを読んだトラヴィス・ファイン監督が映画化したそうだ。 ショーダンサーのルディは、アパートの隣人で薬物依存の女性の部屋からもれる爆音にいつもイライラさせられている。 そんなある日、その女性の息子・・・ダウン症の少年マルコがいつもネグレクト状態であることに気づく。 程なく、彼女は逮捕されてしまい、一人残されたマルコには施設からの迎えが・・・。 けれどルディはマルコを自分で守りたいと願い、恋人のポールに相談を持ちかける。 ルディとポール。 ゲイのカップルの彼らは、愛情深い父母のようにマルコを慈しみ大切に育てるのだが、ゲイに対する社会の偏見から、マルコとの中を引き裂かれてしまう。 そしてルディはマルコを取り返すべく弁護士であるポールと法廷で戦うことになるのだ。 1979年のカリフォルニア。 まだ社会はゲイの人々に厳しかった。 今に至るまでの長い間、たくさんのルディやポールのような人々が人知れず苦しんで理不尽な偏見を受けながら生きて、耐えてきたのだろう。 ブロークバック・マウンテンのような同テーマの映画も数々制作されているけれど、そのような作品の水面下で、現実にこのようなやりきれない出来事が、もう数えきれないほど存在したのだ。 そう想像すると、本当に悔しい、腹立たしい、そして悲しい。 作品の裁判のシーンでは、ずっとそんな思いがこみ上げていた。 周囲の無理解と頭の固い人々が、ただ愛し合い普通の家族になろうとする、それだけを願う3人をことごとく邪魔する。 ただ彼らがゲイのカップルだというだけで。 例えそうでなければ美しい家族愛の話になるものが、何故? 人一倍愛情深い、優しさにあふれた家族なのにも関わらず。 マルコ役のアイザック・レイヴァ君の数少ない言葉や表情の演技は実に愛らしくハグしたくなるような愛おしさだ。 原題は"Any Day Now" 作品の中でルディが歌うボブ・ディランの曲"I shall be released" の歌詞からとったタイトルだと思う。 アラン・カミングの歌は素晴らしい。 彼の声は魅力的で、作品の中では偏見に潰され、それと戦うごとにその歌声は力強く優しくなっていく。 ラストの"I shall be released" を歌う彼の姿とともに、マルコとポール、そしてその思い出の映像が流れていくのだが、本当に切ない演出だ。 映画館の多くの人が、泣きじゃくるほどの悲しく美しい場面だった。 ちなみにアラン・カミングがヘドウィグ・アンド・アングリー・インチのメドレーを歌うこの動画もあまりにもピッタリで素敵なので載せておく。 (2014/7)
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