監督 : ジュリアン・シュナーベル
脚本 : カニンガム・オキーフ、ラサロ・ゴメス・カリレス、ジュリアン・シュナーベル
原作 : レイナルド・アレナス 『夜になるまえに』(国書刊行会刊)
製作 : ジョン・キリク
音楽 : カーター・バーウェル、 ルー・リード、ローリー・アンダーソン
出演 : ハビエル・バルデム、オリヴィエ・マルティネス、アンドレア・ディ・ステファノ、
    ジョニー・デップ、ショーン・ペン、マイケル・ウィンコット

(2000年 米)


 以前ビデオで見た「バスキア」のジュリアン・シュナーベル監督第二作ということで手に取った作品。
前回同様、純粋で孤独な芸術家の伝記物語だった。
主人公レイナルド・アナレスは、1943年にキューバで生まれ、大学時代に作家デビューする。
レイナルド・アナレス
と友人ラザロ

しかし、時代は独裁政権下。
自由を求める作家、しかもホモセクシュアルである彼は迫害の対象となり投獄される。
その後解放された彼は、1980年にアメリカに亡命。
ニューヨークのアパートに住み、しかしどこにも戸籍がないという不安定で孤独な状況下において作家活動を続けるが、やがてエイズを発病する。
そんな彼を最後まで支えたのが友人ラザロである。

主演のバビエル・バルデム
監督自身がアーティストであるためか、映像がとても美しく、そこにレイナルド・アナレスの詩が効果的に使われ、キューバ音楽やルー・リードのメロディが背景に流れ、独特の世界を作っている。

  レイナルドは次から次からあふれ出す言葉で音楽を奏でるようにタイプライターを打つ。
弾圧も亡命もエイズも彼にその手を止めさせることは出来なかったが、「夜があけるまえに」を完成後、ついにレイナルドは自らの命を絶つことを選んでしまう。
1990年、鎮静剤の多量接種により自殺する直前のものだろうか、「Dear friends」という書き出しの遺書は次のようなものだ。

不安定な健康状態、書き続けることもキューバの自由のために戦い続けることも出来ない時に感じるすさまじい憂鬱がもとで、僕は自分の人生に終止符を打つ。ここ何年かのうちに、症状は酷く悪化しているように感じていたが、僕はほぼ30年にわたって取り組んできた文学作品を終えることが出来た。そこで、あなたたちにぼくの恐怖をすべて、だがまた、まもなくキューバは自由になるという希望を形見に残す。(後略)


ジョニーデップ演ずる
ボンボン
 『バスキア』には意外なところで意外な名優が出演していたり、アンディ・ウォーホルにデヴィッド・ボウイを起用するなど斬新な キャスティングが興味深かったが、この作品でもジョニー・デップやショーン・ペンが驚くような役どころで出演している。
ショーン・ペンは気をつけていないと彼と解らないようなチョイ役で、少年のレイナルドが家出をしたときに馬車に乗せる男の役である。
またジョニー・デップは、レイナルドが投獄された収容所に出入りするホモの芸人ボンボン役とヴィクターという軍人の二役。
ヴィクター役では、髪を後ろになでつけ、軍服姿が凛々しく、レイナルドでなくてもほれぼれする。
一方でボンボンは、長年の経験から直腸にものを隠すことが出来るという運び屋で、レイナルドの原稿を運び世に出す重要な役回りだ。
あらためてジョニーデップの役者魂に迫力を感じてしまった。




2004/11/18
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