ブロークバック・マウンテン
BROKEBACK MOUNTAIN
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http://www.brokebackmountain.com/


監督 : アン・リー
原作 : ブロークバック・マウンテン (集英社文(海外))アニー・プルー
脚本 : ラリー・マクマートリー
    ダイアナ・オサナ
音楽 : グスターボ・サンタオラヤ
出演 : ヒース・レジャー (イニス・デル・マー)
 ジェイク・ギレンホール(ジャク・ツイスト)
 ミシェル・ウィリアムズ (アルマ)
 アン・ハサウェイ (ラリーン・ニューサム)
 ランディ・クエイド (ジョー・アギーレ)
 リンダ・カーデリーニ (キャシー)
 アンナ・ファリス (ラショーン・マローン)
 スコット・マイケル・キャンベル (モンロー)
 ケイト・マーラ (アルマ・Jr.)



(2005 米)

私は何故かゲイの映画が好きだ。
男女の恋愛には、結婚や出産や、やがて家族や…と発展して行く安定したヴィジョンがある。
けれどもゲイの恋愛には社会的に認められ約束された幸福の型のような、そういう確かなものがない。
そして、子孫を作り育んで周囲に祝福される男女のセックスに比べ、彼等のセックスは(ある頭の固い人達に言わせれば)神に祝福されない。
それでも、人を愛し、その愛を貫いて育てようとする…そこには、他の何もかもがそぎ落とされたような真に純粋な愛のイメージがあって、そのマイノリティーの苦しさとか強さとか彼等の心の奥に根付いている静かな決意のようなものが、私は好きなのかもしれない。

この映画の原作者は、ワイオミング州の1960年代の、しかもカウボーイ同士の恋愛を描くというゲイにとってはあまりに過酷な背景を選んでいる。
そのことが、主人公イニス達の苦悩や孤独をより大きなものにし人生を複雑にしていってしまうのだが、あえて原作者がそのような設定の中で彼等を描いた理由が、この映画を見ると解る気がする。
雄大で厳しい大自然の中で、誰が誰を愛そうと、抱き合おうと、それが何だというのだろう…、人を好きになることに何の違いがあるだろう…そういう気持ちになる。
けれど一方では閉鎖的封建的でゲイに対する偏見だらけの社会の中で生きる主人公達は、周囲の人々を傷つけ自分の感情に対しても家族に対しても罪の意識に苛まれながら、また身の危険すら感じつつ生きていかなければならない。
その対比には、人間の愚かさも悲しさも感じさせられる。

この作品は2005年アカデミー賞の各賞にノミネートされ監督賞などを受賞しながらも、結局作品賞を取れなかったことで、アカデミー審査員の保守的な傾向への批判など当時何かと話題になった。作品賞を受賞したのはアメリカの人種問題などをテーマとした「クラッシュ」だったが、この作品を見終えて私はやはり「ブロークバック・マウンテン」にとって欲しかったと感じた。


 

=========================ちょっとネタバレ=======================

















主人公イニスとジャックが出会い思い出の夏を過ごしたブロークバック・マウンテン。
友情が芽生え、愛が始まって、そしてそこから苦悩が始まった場所。
そして、ジャックが最後に帰る所として選んだ場所。
この美しくて残酷な聖域の名前は、決してゴールのない、だからこそ終わりのない彼等の愛の物語にぴったりだ。

"Jack, I swear... "
ラスト、イニスのつぶやく言葉が、シンプルで切ない音楽と映像とともにいつまでも耳に残った。

(2007/10)

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