セントラル・ステーション
CENTRAL DO BRAZIL
CENTRAL STATION
http://www.nhk.or.jp/sun_asia/sundance/j/1996_01.html
監督 : ヴァルテル・サレス
製作 : アーサー・コーン
     マルチーヌ・ド・クレアモント=トネーレ
製作総指揮 : リリアン・バーンバウム
脚本 : ホアオ・エマヌエル・カルネイロ
    マルコス・ベルンステイン
撮影 : ヴァルテル・カルバロ
音楽 : アントニオ・ピント
    ジャック・モレレンバウム
出演 : フェルナンダ・モンテネグロ(ドーラ)         マリリア・ペーラ(アイリーン)
        ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ(ジョズエ)       ソイア・ライラ
       オトン・バストス              オターヴィオ・アウフスト
(1998 ブラジル)

 ブラジル、 リオデジャネイロの中央駅(セントラル・ステーション)の一角、今日も主人公のドーラは小さな机を置いて代筆屋を開いている。
ドーラの机の前には文字の書けない人々が列を作って、愛する人、腹の立つ相手、懐かしい人、様々な宛先にそれぞれの思いを込めた手紙を依頼する。
ドーラは今この代筆屋で生計を立てている。
そして仕事が終わると満員の電車に乗り一人暮らしの質素な家に帰る。
ドーラ役のフェルナンダ・モンテネグロはこの映画で多くの賞を獲得しているが、退屈だけれど決して楽ではない日々の繰り返しにうんざりし苛立つ中年女性を上手く演じている。

ある日、彼女の生活に大きな変化をもたらす手紙の依頼主が…。
それが少年ジョズエと彼の母親である。
母親はドーラに、別れたジョズエの父への手紙を依頼したあと突然事故で死んでしまう。
まだ幼い彼は孤児となってしまい、たった一人でまだ見ぬ父親を探しに行くという。

ドーラは、決して少年を暖かく保護する優しい女性なわけではなく、むしろ面倒なことに関わるのもうんざりのようすなのだが、ジョズエを放っておくことが出来ない。
一方でジョズエも、ちょっと素直じゃない。
生意気でドーラの神経を逆なですることを言ってみたりするが、彼女に近づきたくてしょうがない。
そんな二人がぎこちなく接近していき、一緒に父親探しの旅へ出ることになるまでの様子が面白い。
そしてさらに、その道中で少しずつ変化していく彼等の心の距離。
そのちょっとしたエピソードの一つ一つが、ずん、ずんと静かに胸に響いて来る。

"He was looking for the father he never knew.
 She was looking for a second chance."

まったく違う方向を向いている二人だが、父親を捜すというとりあえずの目標で繋がっている。
その絆が知らぬ間に深く深くなって、お互いの人生にとって「忘れられない人」になっていくその過程がこの映画の醍醐味だろう。
そして、この映画のラストも、観た人にとって必ず「忘れがたいラストシーン」のひとつになるはずだ。

ジョズエ役のヴィニシウス・デ・オリヴェイラは靴磨きの少年だったのだが、1500人もの候補の中から見事この役を勝ち取ったそうである。


2006/6/22


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