dead man 音楽 : ニール・ヤング 出演 : ジョニー・デップ(ウィリアム・ブレイク) ゲイリー・ファーマー(ノーボディ) ロバート・ミッチャム(ジョン・ディキンソン・・友情出演) ガブリエル・バーン(チャーリー・ディキンソン) イギー・ポップ(サリー) (1995 米) そんなことをしみじみ感じる。 全編モノクロ映像、ジョニー・デップのおさえた演技は夢の世界に入り込んだように深く美しく、ニール・ヤングの音楽はシンプルで骨太で映像にしっかりとからみ合っている。 と思ったら、なんとこの音楽は映像を見ながら即興で音をつけるという方法をとっているのだそうだ。 なるほどこの試みは、大成功だろう。 その他の要因とも重なって、ニール・ヤングのギターの残響が、この映画に幻想的で残酷な童話のような雰囲気をも持たせている。 会計士のウィリアム・ブレイクは、新しい仕事につくために西部にあるディキンソン鉄工所に向かった。 その旅の列車の風景から始まる物語は、最初の場面からすでに非現実的な箇所が挟み込まれ、滑稽さと深刻さが共存する不思議な雰囲気をかもし出しているのだが、その後さらに、全く予想外な世界に展開していく。 鉄工所への就職に失敗したウィリアムは、失望の中で入り込んだ酒場である女性と出会う。 その出会いから、地味な彼の人生は一転、発砲事件に巻き込まれ重傷を負ったばかりか、成り行きで男を殺害、さらに濡れ衣をきせられ、結局は高額の賞金がかけられたお尋ねものとなってしまうのだ。 そんなウィリアムを助けた先住民の流れ者ノーボディとともに、ウイリアムの逃亡の旅が始まる。 ノーボディは、ウィリアム・ブレイクをすでに亡くなっている有名な詩人と勘違いしてしまう。 そして、死者の魂がさまよっているのだと思い込み、彼の魂を死の世界に帰そうとするのである。 旅をしながら、死と隣り合わせの生を生きる緊張感とともに、ウィリアムの表情が徐々にシャープになっていくさまを、ジョニー・デップがうまく表現している。 それは、小鹿の屍骸の横にいとおしそうに横たわるウィリアムの姿に最もよく表現されていて、小鹿の血と自分の傷から出ている血とを指につけ、インディアンのように顔に塗る彼の姿にはもう、かつてのおどおどした男の面影はない。 そしていつしか、銃の扱いにもすっかり慣れ、気づくと本当のお尋ね者の顔になっているようすだけでも、あの美形のジョニー・デップが演じると見ごたえがある。 残虐さと、死と、滑稽さと、美しさ、それらすべてまとめて西部の風景に包み込み、静かに、またあるときは恐ろしげに朗読される詩そのもののような映画だ。 |
(2005/5/1) [movietop] |
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最後まで見終えて、ふっと思った。 ウィリアム・ブレイクを詩人と思い込んだのは、本当にノーボディの勘違いなのだろうか。 もしかしたら、ウィリアムの方こそ、かつて自分が詩人だったことを忘れてしまい、彷徨っていた魂なのではないだろうか。 背後から撃たれたウィリアムの姿、彼が遠くなる意識の中で見た世界、そしてラストの漂うカヌー。 それらが美しくて恐ろしい何枚もの絵のように、脳裏に焼きついている。 |