http://www.nifty.com/denshaotoko/ 脚本 : 金子ありさ 原作 : 中野独人(新潮社刊) 音楽 : 服部隆之 監督 : 村上正典 出演 : 山田孝之(電車男) 中谷美紀(エルメス) 西田尚美(エルメスの友人) 大杉漣(電車の酔っぱらい) 国仲涼子 佐々木蔵之介 木村多江 岡田義徳 三宅弘城 坂本真 瑛太 (2ちゃんねるの人々) (2005 日本) そんなわけで、当初はあまり期待していなかったのだが、予想外に評判がよいのでちょっと気になってきた。 文字のコミュニケーションを映像に…、 その難題はとても上手くクリアされていたと思う。 こんな演出のしかたがあるのか、と所々で感心してしまうほど、様々な手法を駆使して、あの独特な掲示板での雰囲気を表現することに成功していた。 ただ、電車男を応援する2ちゃんねるの毒男たちの不思議な盛り上がりと、衛生兵が出てくるやりとりなどは、ちょっと映画では苦しいかな…と思う。 爆撃(電車男ののろけ報告)を予想し、武装してデートの帰りを待っていたりする様子を絵にした、迷彩服を着た戦場の毒男達の芝居には、少し引いてしまうかも。 これを、まったく2ちゃんねるに縁がない人々が見たら、さらに理解しがたいのではないだろうか…と、心配になったがどうなんだろう。 主演の山田孝之の演技は、ヲタクの生態(?)をよく観察したものだったが、あまりにステレオタイプなその表現に少し違和感を感じてしまう部分がある。 「美川憲一の真似をするより、美川憲一の真似をするコロッケの真似をした方が解りやすい」っていうのと一緒だ。 典型的なヲタク像をデフォルメした「電車男」の芝居が安易に感じられるのはちょっと残念だけど、一方でそんな不満を補ってあまりあるほどに、彼の綺麗な目が電車男のキャラクターを魅力的なものにしている。 むしろ細かいヲタク演技以上に、電車男の愛すべき健気さがにじみ出た、一途で、適度に哀愁を秘めた、あの目が演技なのだとしたら、確かに凄い。 エルメスの中谷美紀は、イメージを壊さず上手く演じていたと思う。 実際の電車男が、エルメスは中谷美紀似だ…というのだから、この役は彼女しかいないだろう。 全体的に安易な作りが気になるけれど、企画から完成までの時間の短さを考えると、仕方ない気もする。 個人的には、もう少しヲタク側に寄り添って描いて欲しかったという気持が残る反面、でもそれじゃ、この映画はまったく違ったテーマのものになってしまったのだろうな…ということも理解できる。 そもそも電車男が、ヲタクのヲタクによるヲタクのための掲示板で産声を上げた物語なのだとしたら、この映画は、エルメス側の人々がそれを暖かく眺める視点も含んでいなければ意味がないのかもしれない。 そして、解りやすく、さわやかに、気持ちよく、多くの人がこの作品を楽しむために、必要なデフォルメ、必要な簡略化、必要な観点、ということなのだろう。 あーだこーだと考えずに、電車男の眼差しを見ていると、やはり彼をとても好きになるし、応援したくなるし、愛おしく思えてくる。 そして気づくと、「ほらここで泣けー」といわんばかりの演出に、まんまと引っかかってぽろぽろ泣いていたりしたので、あまり文句は言えないのかな。 エンドロールのあとに、ちょっとだけおまけ映像があるので、最後まで席を立たずに観ることをお勧めします。 |
(2005/6/15) [movietop] |