ドリーマーズ
THE DREAMERS
http://www.herald.co.jp/official/dreamers/index.shtml









監督 : ベルナルド・ベルトルッチ
原作 : ギルバート・アデア「The Holy Innocents」白水社刊
出演 : マイケル・ピット(マシュー)    エヴァ・グリーン(イザベル)
    ルイ・ガレル(テオ)    ロバン・レヌーチ(イザベル・テオの父親)
    アンナ・チャンセラー(母親)
音楽 : ザ・ドリーマーズ(オリジナル・サウンドトラック)
2003年 英・仏・伊

1968年のパリ。ヌーベルヴァーグ、5月革命、という時代背景の中で、アメリカからの留学生マシューとパリに住むイザベル、テオの双子の姉弟の3人が繰り広げる耽美的で危うくて儚い若さを描いた作品。

 シネマテーク・フランセーズに通う映画フリークの3人の男女の世界に、1930年代〜1960年代の名作映画から数々の名場面映像が挟まれ、テンポ良くリンクしながら進行する。
これら過去の名作を知っていると、この映画はきっと数倍楽しめる…はずだが、私は未見でいまひとつ深い理解が出来なかったのが残念だ。

 ベルトルッチ監督自身が、強い思い入れを抱くパリという街やシネマテーク・フランセーズ、影響を受け尊敬してきたであろう映画人達やその作品がちりばめられたこの作品は、そられすべての存在に捧げられた、とても美しい贈り物に仕上がっている。

若い3人の役者達は、その監督の思いに、やはり映画に対する彼らなりの真摯な姿勢と愛情で応えた。
それが伝わってくるような、真剣な演技だった。
監督は、彼らの美しい肉体や、その若さが発する痛々しさや躍動感を通して、当時の学生達…熱くて不安定な、それでいてなにかに身を捧げようとする強いエネルギーを持った、あの時代の学生達の姿を描く。
おそらく、彼らの中に監督自身を重ねていることだろう。

 ジミ・ヘンドリックスの"Third Stone from the Sun"とエッフェル塔の映像で映画は始まる。
そしてその後も、ジャニス・ジョプリン、ボブ・ディラン、ミシェル・ポルナレフ、プラターズ、ドアーズ、エディット・ピアフと、当時の懐かしい名曲を中心にした音楽をエッセンスに、主人公マシュー達3人の共同生活が描かれる。
両親が旅行に出かけたイザベルとテオの家での、奇妙で怠惰で熱い、光り輝く時間。
まさに、青春映画…体育会系じゃなくて、映画ヲタク達の青春。
その輝く一時、忘れがたい日々を刻んでいく彼ら。
中でも、3人がバスルームで語り合い、"Hey Joe"を歌う場面が私はとても好きだ。

 この年齢の頃、思い出の1ページに、こんな切ない記憶を持っている人は、きっと多いだろう。
何ヶ月、何年にも感じられるような密度の高い数日間。
その中で出会って別れた、短い時間だけれど、心に深く一生忘れられない何かを刻みつけて去っていった友人、恋人。

ありきたりな言葉だけど、青春が引き起こすマジックの一つなのではないかと思う。

(2005/7/6)
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