ELIZABETHTOWN http://www.e-town-movie.jp/ 製作 : キャメロン・クロウ トム・クルーズ ポーラ・ワグナー 脚本 : キャメロン・クロウ 音楽 : ナンシー・ウィルソン 出演 : オーランド・ブルーム(ドリュー) キルステン・ダンスト(クレア) スーザン・サランドン(ドリューの母ホリー) アレック・ボールドウィン(シューズメーカーの社長フィル ) ブルース・マッギル(ビル ) ジュディ・グリア(ドリューの妹ヘザー ) ジェシカ・ビール(元彼女エレン ) (2005 米) 否定できないな…と、思ったけれど絶対に肯定も出来ない。 少なくとも私の心の中には、結構大きな、「何か」が残った。 しかもそれは、見終えた直後よりも少し時間をおいてからの方が、より大きくなっていくような「何か」だった。 ロード・オブ・ザ・リングのオーランド・ブルームは文句なしの素敵な青年で、キルステン・ダンストも予想外に良くて(私はこの映画を観る前正直言って彼女は好きじゃなかった)個性的な魅力のあるキュートな女性を演じていて好感が持てた。 そして、スーザン・サランドンの存在感が、この映画のグレードを上げているのは確かで、私はこの人の「デッドマン・ウォーキング」が好きなのだけど、あの死刑囚に寄り添うシスターのシリアスな役とはまったく別人の、魅力的でユニークな母親を演じている。 ネタバレになるのであまり書けないが、彼女のタップシーンは必見。 あの表現力にはこれぞプロの仕事と感動するし、笑いながら切なくなる名場面だと思う。 ただ、この映画の数々のエピソードは「あり得ない」と感じることばかりで、事の始まりであるドリューの大失敗からしてすでに無理がある。 シューズメーカーのデザイナーである彼が、とんでもない商品を開発してしまい、それが会社に10億円もの損失を与えてしまうのだ。 彼女にはふられる、会社はクビになる、大失敗をした男として業界の有名人となった彼が、今まさに自殺をしようとしている矢先に、父の死を知らせる電話。 まあ、こんな不自然さいっぱいの設定を作り上げたキャメロン・クロウは、リアリティよりもむしろ、映画全体が醸し出す雰囲気に重点を置いたのだろうと思う。 そう思ってみると、この映画は悪くない。 人生のどん底にあるドリューは、父の葬式のためにエリザベスタウンに向かい、飛行機の中でフライトアテンダントのクレアと知り合う。 そして、個性的なエリザベスタウンの人々との交流、父との思い出、家族、そんな様々な小さな事の積み重ねが、少しずつドリューの心を和らげていくのだ。 私は、あの駄作と叩かれた「ブラウン・バニー」を見た後の気持ちを思いだした。 とにかくエンドロールで「は? なんだこりゃ」と思うのだけど、後からじわじわと言いようのない気持ちで胸がいっぱいになるのだ。 失意の男の話であるという共通点もある。 ただし扱い方や着地点はむしろ対照的だ。 音楽はかつてのロックバンド「ハート」のナンシー・ウィルソン。 途中エルトン・ジョンの曲が、とても効果的に使われている。 人生のどん底から人を立ち直らせてくれるもの、それは同じく人生をがんばって生きている人の存在だったり、彼らと過ごす時間だったり、彼らとともに…或いは一人で悲しみを嘆く時間だったり…きっと誰にとっても、そんなものなのだろう。 今、落ち込んでいる人は是非観に行ってみると良いと思う。 |
(2005/11/7) [movietop] |