ELLE S'APPELAIT SARAH http://www.sara.gaga.ne.jp/ 監督: ジル・パケ=ブランネール
原作: タチアナ・ド・ロネ(著) 高見 浩 (訳) サラの鍵 (新潮クレスト・ブックス) 脚本: ジル・パケ=ブランネール セルジュ・ジョンクール 音楽: マックス・リヒター 出演: クリスティン・スコット・トーマス(ジュリア・ジャーモンド) メリュジーヌ・マヤンス (サラ・スタルジンスキ) ニエル・アレストリュプ (ジュール・デ・ユフォール) エイダン・クイン (ウィリアム・レインズファード) フレデリック・ピエロ (ベルトラン・テザック) ミシェル・デュショーソワ ドミニク・フロ ナターシャ・マスケヴィッチ ジゼル・カサデサス (2010 米) ホロコーストを題材にした映画は山ほどあるが、これはフランス人がユダヤ人迫害に加担していたというあまり知られていない事件を元に描いたものである。 現実にこの事実を知るフランス人は少ないのだろうか。 この映画の中でも現代に生きる若いジャーナリスト達が 「パリでこんな事があったなんて吐き気がする」 と言うシーンがあるが、そこで主人公は 「あなたがその場にいたらどうしたか?」 という辛辣な質問を返す。 それは、見ている私への問いかけでもあり、今この何の抑圧も無い状況で何の偏見の刷り込みもなく自分の身に危険を感じることもない、そういう現代からどんな批判も出来るだろうけれど、その場に身を置いていたらどうだったのだろう・・・という問いには、我ながら恥ずかしくなる回答しか思い浮かばない。 主人公の女性ジュリアは、パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストで、彼女がこの歴史上の事件に関わるようになったのは、夫の育った古い家に引っ越すことになったことがきっかけだった。 実はその家は、ユダヤ人少女サラの一家がかつて住んでいた家だったことを知り、そこから過去のサラの物語とそれを調べて解明していくジュリアの物語が交互に進行していく。 このサラの「鍵」とは何の鍵なのか。 そう思って見始めたのだが、冒頭フランス当局が一斉検挙のためサラの家に押し入ってくるシーンでこの鍵の重い意味が判明する。 父、母とともに当時10歳のサラは連行されてしまうが、その時幼い弟を助けようと納戸に隠し鍵をかける。 いつもの「かくれんぼ」と言って聞かせ、すぐ戻ると約束した幼いサラの機転は、恐ろしい結果を迎える。 この鍵は、そんな悲しみと恐怖の象徴の鍵なのだ。 連行された彼女たちは、ヴェルディヴ(屋内競輪場)に収容され、そこから強制収容所へ送られる。 そして幼い弟は・・・。 いたたまれないサラと家族の思い、それらを徐々に知っていく主人公ジュリアの心の変化・・・ぐいぐいと映画の世界に引き込まれていく。 けれど、予告編のラストシーンのように、この作品は穏やかな笑顔で見終えることが出来る作品だった。 あの時私達がそこにいたら何が出来たのか、そして今に生きる私達に何が出来るのか。 余りに重いテーマではあるけれど、最後には希望を持つことが出来る名作だ。 (2013/6/16)
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