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監督 : オリバー・ヒルシュービーゲル
出演 : モーリッツ・ブライプトロイ、 マレン・エッゲルト、 クリスティアン・ベッケル、 オリバー・ストコフスキー、 ユストゥス・フォン・ドーナニー
(2001 独)

 このスタッフの読みにくい名前から判るように、これはドイツ映画です。
そして、実話。それも、事実をかなり忠実に再現しているらしい。

 かつて、スタンフォード大学で実際に行われた心理学部の実験。
・・・・・まず新聞広告によって24名の被験者を集め、彼らを看守役と囚人役とに振り分ける。
模擬刑務所において、実際の刑務所に近いルールが与えられ、その中で被験者達はそれぞれ自分の役を演じる。

 この実験が、恐ろしい結末を招き、後に訴訟問題にまで発展することになるのだ。

 ・・・・・・・「役割」は、人格、行動にどのような影響を与えるか。

・・・・と、ここまでで、だいたい実験の先の展開が読めると思う。
ただ、どのようにして彼らは変わっていくのか・・・。
そのあたりの詳細がとてもリアルに描かれている映画なのである。さすが実話だ。

 囚人には日常的な決まり事、つまり普通の刑務所内で囚人に課せられるのと同様の規則がもうけられ、看守は囚人達を上手く統率する責務が与えられる。看守役は囚人役を番号で呼び、囚人は看守に敬語を使う。
最初は、冗談交じりにそれぞれの役割を演じていた彼らが、囚人役の一人が「食事を残してはいけない」という規則を破ろうとした事をきっかけにどんどん変わっていく。

 主人公タレクは、元は記者なのだが、現在は不本意にもタクシードライバーとして生活している。
彼は、この実験に参加し、これを記事にすることで記者としての復帰を企てた。
そして、特殊カメラを仕込んだめがねをし、被験者となって、この疑似刑務所に潜入する。

 この人、タレク役のモーリッツ・ブライプトロイは「ラン・ローラ・ラン」で、ローラのボーイフレンド役をやっていた人です。
まったく違うキャラなので途中まで気づかなかった。
両方見ると面白いかもしれないです。

 
 どんな環境にいて、他人にどんな位置づけをされ、どんな役割を負わされるかに関わらず、人間は常に「自分自身」をしっかり持っていられるものだろうか。
「自分の考え」をしっかり持ち続けられるだろうか。
それがいかに難しいことか、この実験が証明している。
 「役割」が「立場」が「呼び名」が人を変える力を持っているなら、それを上手く利用して人を思いのままに操る事さえ出来るということだ。
確かに思い当たる話はたくさんある。
一部の特殊な組織に限らない、日常的なことだ。

 どんな役に就くか、どんな立場に置かれるか、どんな肩書きで呼ばれるか。
それによって、人間は大きな勘違いをし、いつのまにか成りきり、ある時には、その呼び名に甘んじてプライドを失ってしまう。

 良い意味でも悪い意味でも、人はこんな表面的な物事に大きく左右されてしまうものなのだ。
それだけは忘れないようにしなくちゃ・・・恐ろしい。
 

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