ガンジー
コレクターズエディション
GANDHI
監督・制作 : リチャード・アッテンボロー
脚本 : ジョン・ブライリー
音楽 : ラヴィ・シャンカール
出演 : ベン・キングズレー(マハトマ・ガンジー)
    ロヒニ・ハタンガディ(カストルバ・ガンジー)
    ロシャン・セス(ネール)
    アンドリューズ(イアン・チャールソン)
    キャンディス・バーゲン(マーガレット)
    ジョン・ギールグッド(アーウィン卿 )
    マーティン・シーン(ウォーカー)
    エドワード・フォックス(ダイヤー将軍)
    トレヴァー・ハワード(ブルームフィールド判事)
    ジョン・ミルズ(総督)
(1982 英/印)

 人々にマハトマ(偉大なる魂)とよばれたインド独立の父ガンジー(1869〜1948)の半生を描いた大作である。
モハンダス・K・ガンジーは、インドの裕福な家庭に生まれ、イギリス留学中弁護士の資格を取得、のちに南アフリカに渡った。
南アの人種差別を体験し、人一倍正義感の強い彼は、そこで南アフリカの法律と戦うこととなる。
と言っても、終始一貫して暴力をいっさい用いずに戦う「非暴力」という方法だ。

後にインドに帰国した彼は、英雄として迎え入れられる。
そして、インドの現状…当時イギリスの支配下にあったインドの、特に下層階級の人々の現状を目の当たりにしたガンジーは、祖国の独立を指揮するために再びそこで戦うことになるのである。

 映画は、突如ガンジーの最期の場面、狂信的ヒンズー教徒によって、彼が銃殺されるシーンで幕を開ける。
そして、壮大な葬儀の列とともに、アインシュタインがガンジーについて語った次のような言葉が流れる。
「未来の人たちは信じられないだろう このような人が地球上に実在していたことを 」

そこから場面は変わり、弁護士として南アフリカに渡った若きガンジーが、不条理な差別を体験するシーンから、あらためてガンジーの半生の物語がスタートするという構成だ。


DVD「ガンジーコレクターズエディション」には本編の他に
 
 1.主演のベン・キングスレーが語る「ガンジー」
 2.「ガンジー」ができるまで(フォト・モンタージュ)
 3.マハトマ・ガンジー語録
 4.ニュース映像
 5.フィルモグラフィ
 6.オリジナル劇場予告編

が収録されている。


全部観るとかなり見応えがあるが、特に『ベン・キングスレーの語る「ガンジー」』では、キャスティングの裏話、偉人を演じるベン・キングスレーの苦心など様々なエピソードを含む興味深い内容だと思う。
また、『ニュース映像』は当時のイギリスで放映されたもので、あまりマスコミが好きでなかったというガンジー本人の姿が残る貴重なものである。
そしてこれを見ると、いかにベン・キングスレーがガンジー本人になりきって演じていたか、見分けがつかないほどの姿や仕草にあらためて驚かされる。

 ガンジーの半生を通して感じたのは、彼の回りで共に戦った人々の犠牲と勇気の価値だ。
イギリス人牧師アンドリューズ、当時インドの指導者的な立場にいたネール、身近で彼を支えた妻のカストルバ、養女であり協力者のミラベン…。
そして、大変な忍耐を必要とするこの「非暴力」という思想に、賛同し結束した、インドの労働者達ひとりひとり。
彼らの中には、アムリツァールの公園での集会中、イギリスのダイヤー将軍率いる軍隊によって、無抵抗のまま射殺された人々もいる。
その時の死者は、1516人。

イギリスへの不満に民衆が爆発し、暴動を起こすたび、ガンジーはそれをとめるために命がけの断食をする。
この意志の強さと行動力は、自らの心の中にある不安や迷いとの、自分自身との戦いの結果であることを感じさせる言葉が、断食のシーンで出てくる。

Whenever I despair, I remember that the way of truth and love has always won.
There may be tyrants and murderers, and for a time, they may seem invincible,
but in the end, they always fail. Think of it, always.
私は絶望したとき思い出すのだ。歴史を通じて、真実と愛は常に勝利者であったことを。
暴君や殺人者は一時無敵のように見えるが、
必ず最後には滅びていることを。常に、そのことを考えて下さい。


多くの偉人が、おそらく皆そうであったように、彼もまた迷い悩む不完全な人間であったと思うと、余計にその偉業が尊いものに感じる。
この映画は、そのような人間臭さを持ち合わせる魅力的な人間ガンジーと、歴史上の偉人としての彼の大きさとを、同時に感じさせてくれる。

ガンジーの思想は、正直、あまりに理想主義的で非現実的のようにも思える。
けれど、かつて暴力で何かが解決しただろうか。
それは、解決したように見えて、ほんの一時、収まったかに見えただけではないのか。
そんなことを考える。
私達は今沢山の問題をこの地球上に抱えていて、解決の努力をしているにもかかわらず、遅々として進まないのが現実だ。
核保有国は決してそれを手放そうとはせず、テロに対しては同じように武力で報復し、その一方で貧困のために餓死する子どもが3秒に一人いるという現実。
そんなことを思うたびに、ガンジーが残したこの言葉こそが今、いきづまったこの現実を変える力になるように感じる。

そして、冒頭で流れたアインシュタインの言葉が、あらためて重みを増して心に残る。
ガンジーを非現実にしては、いけない。
多大な勇気と犠牲とを、無駄にしてはいけない。
こんな人物が実在したこと、こんな戦い方があるのだということを、信じられない世界にしてはいけない。
私にも責任がある…と、強く感じた。


 

(2005/8/1)

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