ニューヨーク・セレナーデ
GET WELL SOON
監督 : ジャスティン・マッカーシー
脚本 : ジャスティン・マッカーシー
出演 : ヴィンセント・ギャロ(ボビー・ビショップ)
    コートニー・コックス(リリー)
    ジェフリー・タンバー(ミッチェル)
    レグ・ロジャース(キース)
    アラン・カルター(アナウンサー)
(2001 米)

 アナウンサーとして大成功をおさめたボビー・ビショップが、ある日の生放送中突然キレてしまう。
ゲストのセクシーな美人モデルに、「君とやりたい(I'd like to try fuck you so much)」などと言ってしまうのだ。
「は?」「なんて?」「言っちまった…」
凍り付くゲスト、スタッフ、テレビの前の視聴者の顔が次々と映し出される。
そこへ追い打ちをかけるように、さらにゲストに暴言を吐くボビー。
当然番組は滅茶苦茶になる。

夢がかなって欲しかったものを手に入れた代わりに、何か大切なものを失ってしまう。
よくあることだ。
まあ、多くの場合、「成功の代償」と信じ込むことで誤魔化してしまうのだろうし、それでこそちゃんとした社会人…ということなのかもしれない。
でも、ボビーは、言っちゃったのである。
今の生活を限界ギリギリまで耐えた末の破壊衝動…、誰もが一度は、その破壊衝動のままに行動してみたいと思ったことがあるんじゃないだろうか。

 さてここから、ボビーのすでに失ってしまったもの…最愛の女性リリーを取り戻す戦いがニューヨークで繰り広げられる。
この映画の面白さは、ボビーとリリーの恋愛物語の脇を固める変わった人々のキャラクターだろう。
けれど、誰もがそれぞれに魅力を持っていて愛すべき人達である。
特にリリーの周りには、ゲイであることを隠している現恋人のマーク、精神病院に入院中の弟キースとその仲間達、何故かホームレスになる練習をしている母親。
みんなイカレているようで、実は大切なものを見失わずのびのびと生きているように見えてしまう不思議なキャラだ。
男だから、女だから、年寄りだから、有名人だから、…と、多くの人が背負うものの重さに無用の苦難を強いられている中で、そんなものは幻想だと言わんばかりの生き方をしている彼らが羨ましくもある。
何が普通なのか、何か良いのか悪いのかわからなくなる。

ヴィンセント・ギャロが売れっ子アナウンサーという、まったくイメージに合わない役を彼がどんなふうに演じるのか興味があったが、やはりギャロはギャロ…だった。
客観的に見て、ギャロファンじゃないと、いまひとつつまらない映画に思えるかもしれないけれど、彼のスタイリッシュでナイーヴな魅力に取り憑かれている人なら、文句なくお勧めだ。


(2005/6/25)
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