砂と霧の家 
House Of Sand And Fog
http://www.dreamworks.com/houseofsandandfog/
監督 : ヴァディム・パールマン
原作 : アンドレ・デビュース三世
     『砂と霧の家』(DHC刊)
脚本 : ヴァディム・パールマン
    ショーン・ローレンス・オットー
音楽 : ジェームズ・ホーナー
出演 : ジェニファー・コネリー(キャシー)
     ベン・キングズレー(ベラーニ)
     ロン・エルダード(レスター)
    ショーレ・アグダシュルー(ナディ)     フランシス・フィッシャー
    キム・ディケンズ     ジョナサン・アードー
(2003 米)

 『失って、初めて気付いた。
求めていたのは、家(ハウス)ではなく家庭(ホーム)だったと…。』

というのが、この映画の劇場公開時のコピーなのだけど、全く本当にその通りのストーリー。

ジェニファー・コネリー演ずる無職で夫と別れたばかりの主人公キャシーと、イランから亡命してきたベラーニ大佐一家とが、一軒の家の所有をめぐって対立するところから彼らの運命が変わり始める。
事の始まりは、キャシーの所得税未納による財産の差し押さえ。
それはキャシーの唯一の財産、父の残してくれた思い出の家である。
競売物件となったその家を買ったのがベラーニ大佐なのだが、彼にとってもこの物件は波乱に富んだ苦労の多い人生の果てにやっと手に入れた思い入れのある家なのだ。
ところが、なんとこれが郡の手違いによる課税でキャシーには納税義務がなかったことが後になって判明する。
両者は当初弁護士を介しての話し合いを始めるのだが、双方にとってただならぬ執着があるこの家、またそこにキャシーに思いを寄せる保安官のレスターが絡んだりで話はますますややこしくなっていく。

なんでこう、誰も彼もが感情的な行動を起こすのか、そもそもトラブルの原因となるミスをした郡は何ら解決に手を貸さないのか、見ていて納得がいかない部分が引っかかる。。
ちょっと展開が強引では…と思うような箇所もある。

ジェニファー・コネリーとベン・キングスレーの演技は申し分なく、移民としての…それも政変による亡命で屈辱的な生活をしてきたベラーニ大佐の複雑な心情をキングスレーは上手く表現している。
ベラーニ大佐の家族関係や絆の描き方は丁寧で、妻も息子も、控え目だけれど魅力的な人々に描かれており、彼らはそれぞれに、アメリカという国で決して心から落ち着くことの出来ない生活を重ねてきたつらさを抱えているのがよく解る。
けれど、キャシーとレスターのカップルに至っては、「だから今それをしちゃダメでしょ…」と口を出したくなるような行動が満載で、いくら追いつめられ感情を押さえきれない状況とは言え、ちょっと共感するには苦しい。

映像は、テーマとなる家を中心にミステリアスで美しいな良い雰囲気を出しているし、出演者は豪華だし、なのに、強引にこの結末にもっていくストーリー展開は…。
なんだかアンバランスさを感じて、残念な気持ちが残る映画だった。

でも、追いつめられた状況だからこそ、余計に裏目裏目に出る行動に暴走してしまうのが人間。
それが人間の弱さ、悲しさ…なのかも。



(2005/10/19)

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