ラヴェンダーの咲く庭で
LADIES IN LAVENDER
http://www.kadokawa-herald.co.jp/official/lavender/
監督 : チャールズ・ダンス
原作 : ウィリアム・J・ロック
   『レディス イン ラヴェンダー』
             ワニブックス
脚本 : チャールズ・ダンス
音楽 : ナイジェル・ヘス
出演 : ジュディ・デンチ(アーシュラ)
  マギー・スミス(ジャネット)
  ダニエル・ブリュール(アンドレア)
  ナターシャ・マケルホーン(オルガ)
  ミリアム・マーゴリーズ   デヴィッド・ワーナー  トビー・ジョーンズ
  クライヴ・ラッセル   リチャード・ピアーズ   ジョアンナ・ディケンズ
  ジェフリー・ベイルドン   ティモシー・ベイトソン
(2004 イギリス)

 1936年、イギリスのコーンウォール地方。
海辺の小さな一軒家で静かに暮らす年老いた姉妹に、ある朝大事件が起きる。
目覚めて外へ出た二人が波打ち際で見つけたものは、どこからか流れ着いで意識を失っている見知らぬ青年の姿だった。

この映画が上映されていた頃、ちょうど「ピアノマン事件」が起きた。
結局狂言だったことが解ったのだけれど、あまりにこの映画の設定に似ていたその事件は日本でも話題になった。
ただこの映画、日本ではミニシアター系の上映だったので、そんな事件でもなければあまり注目されもしなかったかもしれないが、二人の大女優が競演することもありイギリスでは試写会にエリザベス女王も登場するほどの話題作だったようだ。
確かにこの大女優たちの控え目だけど味わい深い演技は一見の価値がある。

少し気むずかしそうではあるが、落ち着いて物静かな姉のジャネット、そして好奇心が旺盛でちょっと気の強そうな妹アーシュラ。
さっそく彼女たちはその青年を助け、言葉も解らないこの異国の青年を介抱する生活が始まる。

 二人の老婦人が、このミステリアスな青年にだんだんと心ひかれていきながら、それぞれ微妙に違う感情を抱きつつ戸惑う様子が丁寧に描かれる。
特に妹のアーシュラの、まるで初めて恋をした少女のような戸惑いや嫉妬や恥じらいが、最初は設定として少し無理な気がして受け止め難く違和感を感じたのだが、観ているうちに次第に彼女の気持ちが我が事のように感じられた。
そして彼女の恋心を共有できるようになっていく。

 近所に住む若き画家オルガへの、老姉妹のゆれる感情も面白い。
老姉妹には無いあらゆるもの…才能、若さ、可能性、美貌を持っているオルガへの警戒心や嫌悪。
ことに、アンドレアが彼女に興味を抱くようになると、老婦人達はその子供じみた嫉妬心をもてあましつつも押さえきれずに彼等の邪魔をしてしまうのだ。

 ここしばらくときめいていないなぁ…という特に女性の方々、年齢を問わずこの映画のさまざまなシーンは恋の初めのあの感じを思い出させてくれるだろう。


============================ちょっとだけネタバレ=======================











 庭で散髪をした後のアンドレアの髪を、そっと拾って後ろ手に隠すアーシュラの後ろ姿に、切なくて胸がキュンとしてしまった。
確かに彼女の姿形はおばあちゃんではあるけれど、その後ろ姿から漂ういじらしさは少女そのものだ。
けれど、この恋はもちろん成就するはずもなく…。

最後は、アンドレアの奏でる美しいヴァイオリンの音とともに締めくくられ、素敵なラストでさわやかな優しい気持ちになれると思う。



(2006/9)
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