MEMORIES OF MATSUKO http://kiraware-matsuko.com/ 原作 : 山田宗樹 『嫌われ松子の一生 (上)』 『嫌われ松子の一生 (下)』 (幻冬舎文庫刊) 音楽 : ガブリエル・ロベルト 渋谷毅 『嫌われ松子の歌たち』 出演 : 中谷美紀 (川尻松子) 瑛太 (川尻笙) 伊勢谷友介 (龍洋一) 香川照之 (川尻紀夫) 市川実日子 (川尻久美) 黒沢あすか (沢村めぐみ) (2006 日本) 以前、本屋さんでこの作品の文庫本を見つけ、あまりにそのものズバリな不思議なタイトルに惹かれて手に取った。 中谷美紀主演で映画化決定…と帯がついている。 著者の山田宗樹という名前について何の知識もなかったが、なんとなく衝動的に買ってしまった。 実に不幸な女性の…腹立たしいほど不幸な一生を描いた、重い小説だった。 読み終えて、これを中谷美紀が…と想像すると「永遠の仔」のようなイメージの映画が頭の中に展開する。 このような暗い映画を作って、果たしてヒットするんだろうか。 しばらくして映画のプロモーションが始まった。 監督は゜下妻物語"の中島哲也…!? ポスターを見たら、これはなんと「永遠の仔」の世界とは全く違う…、いやいや「嫌われ松子の一生」ともすでに全然違う…。 作品の良さをぶち壊してはいないだろうか、けれど、「下妻物語」を創った監督のことだから…、などと考えているうちに、マスコミやこの映画を見た人の、予想外に良い評判を耳にするようになった。 その頃にはすでにロードショーが終わってしまったのだけど。 そんなこんなで、今回テレビで上映されようやく中島・中谷コンビの創り上げた松子と対面することができた。 こんなふうに原作の骨組みとエッセンスだけを残し、まったく異質な世界を創り上げる映画化というのも有りなのか…、と驚いた。 しかも、松子はより魅力的に、より愛すべき女性になっている。 原作はもっと淡々と、松子から距離を置いて書かれていたように感じたし、その手法にはそれの良さがあるが、松子の観客愛され度…とでもいうようなものは、絶対に映画の方が上である。 そして原作の持つ暗さ、ストーリーの持つ重さを払拭するのに、ミュージカル仕立てにしてしまうという発想も意外である。 松子は福岡大野島の中学校教師であったが、ある盗難事件をきっかけに学校を解雇され、それがきっかけで絵に描いたような転落人生を送る。 しかもそれがあまりに悲惨なのである。 松子は愚かではあるけれど、愛情深く、我慢強く、明るく健気だ。 不器用さゆえに貧乏くじを引いてしまった…そんな経験にちょっとでも覚えがある観客たちは、決して松子を蔑むことなど出来ないだろう。 そして共感し見守らずにはいられない。 脇役がとても豪華で、宮藤官九郎、 劇団ひとり、 BONNIE PINK、 AI 山田花子…などなどちょっと異色な人たちも出演している。 この作品で日本アカデミー賞主演女優賞をとった中谷美紀は、撮影現場を逃げ出してしまうほどの精神的辛さ、中島監督との数々の衝突をインタビューで語っていた。 とても緊張した撮影現場だったようだ。 この細部にまで神経が行き届いた、美しい映像や楽しい演技の裏には、そんな出演者やスタッフの苦労が隠されていたのか…と、これまた意外な気がした。 2007/6/30
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