Misery 監督:ロブ・ライナー
原作:スティーヴン・キング 脚本:ウィリアム・ゴールドマン 出演 :ジェームズ・カーン(ポール・シェルダン) キャシー・ベイツ(アニー・ウィルクス) リチャード・ファーンズワース(バスター) (1990 米) スティーブン・キングの同盟小説を映画化したじわじわと怖いサイコ・スリラーである。 ある日、売れっ子作家ポール・シェルダンは、また一つ小説を書き上げた。 彼を人気作家にした"ミザリー"シリーズである。 けれど今回の小説で彼は主人公ミザリーを死なせる結末を選んだ。 ミザリーによって富と名声を得ることが出来たポールだったが、一作家としての彼の希望は、ミザリーに振り回されることなく、新たな小説を手がけることだった。 完成した原稿を届ける途中、彼の車は雪道からはずれ、転落してしまう。 猛吹雪の中、ポールを助けたのは、アニー・ウィルクス(キャシー・ベイツ)だった。 彼女は家にポールを連れ帰りそこで親切な介護をする。 何故なら彼女はポールの"No.1ファン"だったのだ。 雪に閉ざされたアニーの家で、二人の生活が始まった。 そのうち、アニーはポールが持っていた新しいミザリーシリーズの原稿を是非読みたいと言い出し、ポールは命の恩人である彼女の願いを快く承諾した。 アニーのポールに対する熱狂的なファンぶり。 小説の主人公である、架空の人物ミザリーに対する強い思い入れ。 どれもこれも、確かに"No.1ファン"を名乗るにふさわしい。 けれど何かおかしい。 その熱狂ぶりも、興奮した時のエスカレートぶりも、尋常ではないのである。 そして何よりおかしいのは、彼女がなんだかんだと理由をつけて、外界との接触を遮断しようとしていることだった。 このあたりからアニーは徐々に本性を現す。 原稿を読み終え、ミザリーの死という物語の結末を知ったとたん、アニーの本性は一気に露呈する。 しかし両足を骨折し身動きのとれないポールは、逃げることもかなわずアニーの家に監禁される生活を続けるしかなかった。 作家ポールシェルダンの熱狂的なファンであるアニーが、両手を胸の前に組み、恥じらいながらその思いを告げる少女のような表情。 そして逆上した時のもう一つのアニーの異常な顔。 その怖ろしい表情、声、言葉を自在に操って恐怖に引きずり込むアニー役のキャシー・ベイツが、大迫力だ。 この映画はキャシー・ベイツ無くしては成立しなかったと絶賛され、アカデミー賞主演女優賞を受賞した演技はすごい。 逃げ出そうとするポールの企みがアニーにばれてしまった時の逆上ぶりには、この世で一番怖ろしいのは生きた人間の心だと、しみじみ感じさせられる。 巨大なハンマーで、叫ぶポールの足を潰すアニーの形相が脳裏に焼き付いて夢を見そうだ。 この恐怖の最中でさえ、ふっと笑いがこぼれてしまうという不思議な味をかもし出しているのもこの映画の特徴で、現実の滑稽さを上手く描き出している。 それは、このキャシー・ベイツという女優の持つ独特の可愛らしさの力でもある。 恐ろしさと可笑しさを同時に味わうという風変わりな体験をしながら、またアニーの可愛らしさと恐ろしさの間を行ったり来たりしながら、地の底から突き上げてくるような恐怖とともに、彼女の女優としての魅力が心に残る。 キャシー・ベイツ恐るべし。 2004/10/12
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