モンゴル
http://mongol-movie.jp/(日本語)
http://www.mongolmovie.com/ (英語)
http://mongol.ctb.ru/en/ (ロシア語/英語)
監督・脚本 : セルゲイ・ボドロフ
音楽 : トゥオマス・カンテリネン
出演 : 浅野忠信(チンギス・ハーン(テムジン))
  スン・ホンレイ(ジャムカ)
  アマデュ・ママダコフ(タルグタイ)
  クーラン・チュラン(ボルテ)

(2008 ドイツ/カザフスタン/ロシア/モンゴル)



 2007年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、日本の浅野忠信が主演していると言うことで昨今話題になっている作品だ。
浅野忠信は大好きな俳優さんだが、彼がチンギス・ハーンを演じたというのがちょっとピンと来なかった。
モンゴルを統一した大指導者の役をどちらかと言えばナイーブで繊細な感じの役を演じてきた彼がどんなふうに演じるのだろう…。
…というのが観る前の印象と気持ちだった。

この作品は、ドイツ・ロシア・カザフスタン・モンゴルの4カ国の合作で、しかも13ヵ国からの役者とスタッフの才能を集めて作られたそうだ。
親友であり宿敵でもあるジャムカとの合戦のシーンは圧巻で、上空から撮影した、両軍の馬がモンゴルの大平原を土煙を上げて左右から走り寄るシーンは、観ているだけで胸躍る迫力だ。
オフィシャルサイトによれば、『約600人のクルー、1000人を越えるエキストラ、カザフスタンから運んだ300頭の馬たちが集結した様子は、ボドロフ監督曰く「どこかの領土を侵攻可能な軍隊!」のようだった』そうである。

そしてやはり、浅野忠信は凄い役者さんだとあらためて思う。
強く勇敢なだけではない、優しく辛抱強く愛情にあふれたチンギス・ハーン像を見事に作り上げていて、そんな彼は撮影中もモンゴル人俳優達から尊敬し慕われていたそうである。
当然だが全編モンゴル語のセリフ、モンゴル剣での爽快なアクション、堂々とした乗馬のシーン…それも2年間の他国での撮影だ。役者さんというのは、本気でやったら命がけの仕事なんだというのがしみじみと伝わってくる。
「ピクニック」や「フォーカス」の、線の細いイメージがある彼のどこにそんなエネルギーが潜んでいるのか…と、信じられないくらいだ。

…と、ついついファンとしてはベタ褒めしたくなってしまうのだが、客観的に観てもとても良い作品だと思う。
妻ボルテとの神秘的とも言える強い絆、友ジャムカを演じるスン・ホンレイの存在感も良く、とても魅力的なライバルになっている。
音楽は時折ホーミーが効果的に使われていて、モンゴルの風景にはさすがにぴったりだ。
勝利を祝う席でテムジンとジャムカが歌っていたのもおそらくそうだろう。
何とも形容しがたいこの、心の奥底に響いてくるような低い倍音は、無性に心惹かれるものがある。。

 歴史書によれば、チンギス・ハーンの人生には空白の期間があるのだそうだ。
セルゲイ・ボドロフ監督はその期間を、ハーンは囚われの身として過ごしたのでは…というある歴史学者の説をもとに、独自の解釈でストーリーを作り上げた。
後に一大帝国を築くハーンの、その直前の空白。
大志に向かって進み行動を起こすことを阻まれた運命のその過酷な時間に、決して失望することなく消耗しきることなく、むしろまるで瞑想と充電の好機であるかのように時を味方に付けた非凡な勇者…そんな解釈はなるほど納得できるような気がする。




2008/4/9
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