監督 : パク・チャヌク 原作 : 土屋ガロン(作) 嶺岸信明(画) 出演 : チェ・ミンシク(オ・デス) ユ・ジテ(イ・ウジン) カン・ヘジョン(ミド) (2003 韓国) この映画の主人公、オ・デスはある日突然何者かに誘拐され、理由も聞かされないままなんと15年という歳月監禁され続けた。 デスは妻と一人娘を家族に持つ普通の男だった。 ただ少しやんちゃで、女性関係が派手で、酒癖が悪く、けれど陽気で楽しい明るいサラリーマンである。 そんな彼が友人と飲んだ帰り、公衆電話から家に電話をする。 その日は幼い娘の誕生日だったのだ。 これからプレゼントを持って帰ると言ったその直後、デスは忽然と姿を消す。 いつ終わるとも知らされていないこの監禁、ビジネスホテルのシングルルームくらいのその部屋には『笑うときは世界と一緒、泣くときはおまえ一人』と書かれた額が不気味にかかっている。 デスはそこでボクシングの練習をし、自らの伝記を書き、孤独と戦い、幻覚に絶叫し…、その間世界ではベルリンの壁が崩壊し、21世紀になり、ニューヨークで同時多発テロが起きた。 監禁中の15年、デスにとってテレビだけが外界の情報を伝えてくれる、またかろうじて正気保つ唯一の支えだった。 そして15年後、監禁されたときと同様、またしても理由すら告げられずに、デスは突然解放される。 食事に入ったある店で、デスは年の離れた若くて魅力的な女性ミドと知り合い、共に犯人を捜し始めた。 謎が溶け始め、まもなく犯人ウジンが特定される。 やっと会えた犯人は意外にも、デスにお互いの命をかけたゲームを持ちかける。 7月5日までに、監禁の理由を解明すること。 解明できたら自分が死ぬ、出来なかったらデスを殺すと。 あと5日…。 さらにウジンは言う『傷ついたものに復習は最高の薬だ』。 映画の原作は日本のコミックなのだそうだ。 なんとも突飛な発想だが、映画があまりに隙無くしっかり作られていて不自然さを全く感じさせない。 現に、日本でも同じような監禁事件が記憶に新しいので余計にぞっとする。 この映画『ラストは他言無用』だそうなので、ネタバレも書かないけれど、確かに予想外のラストに驚く。 「何故監禁されたか」の理由が、今日明日誰にでも起きうる、しかし結果的に決して些細な罪ではないのだ。 『砂粒であれ、岩の塊であれ、水に沈むのは同じだ』 犯人ウジンのこの言葉がそれを象徴している。 それらいくつかのウジンからのメッセージは、ウジンの過去を知っていくことにより、デスに向けられのではなく実は自分自身に向けられたものかもしれないと気づく。 このラストは原作のコミックのラストとは違うそうだ。 監禁の理由も、映画独自のものらしい。 カンヌ映画祭でグランプリを獲得したという本作は、確かにストーリー構成がとても綿密で、各所に置かれた布石が完璧に繋がっている高水準の作品だと思う。 謎解きがとてもスマートに、それでいてドラマティックに行われ、同時に登場人物の心の動きをとても丁寧に描いている。 柱となる3人の役者、特にチェ・ミンシクの演技力には圧倒されるが、スタッフのどのパートも非常に完成度が高い。 音楽スタッフの一人イ・ジスの、少しレトロなワルツが優しく流れとても心に残った。 余談だが、イ・ジスは『冬のソナタ』でベ・ヨンジュンの代役でピアノをひいているのだそうだ。 切なく美しい愛の物語であるが、R15指定なだけあって暴力シーンも多く残虐な箇所もある。 決して後味が良いともいえない映画だが、にもかかわらず私は何故か不快感を感じなかった。 全体にちりばめられたセンスの良いユーモアが持つ効果は大きいと思う。 そして目を覆いたくなるような、あるいは暴力的なシーンにも作り手の視点の高さのようなものが感じられるからかもしれない。 もうひとつ、チェ・ミンシクは非常に魅力的な俳優だった。 2004/11/19 |
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