山の郵便配達
那山 那人 那狗
POSTMEN IN THE MOUTAINS
http://www.prcmovie.com/postmen/
監督 : フォ・ジェンチイ
原作 : ポン・ヂェンミン
    『那山那人那狗』
脚本 : ス・ウ
作曲 : ワン・シャオフォン出演 : トン・ルーチュン
    リィウ・イエ
    ジャオ・シィウリ
    ゴォン・イエハン
    チェン・ハオ
(1999 中国)

 日本で公開された時、観たいと思いつつも見逃してしまった作品の一つだったが、最近になってようやく観ることができた。
運命的だと思うくらい、自分自身の昨今のテーマにぴたりとはまる作品に出会うことがたまにあるが、私にとってこの映画もその一つだったと思う。

 ストーリーはいたってシンプルで、タイトルの通り長年山の郵便配達をしてきた男の引退と、その仕事を継ぐ息子と、それを見守る母親の話である。
息子の初仕事の日に、同行する父が山の道順や仕事の段取りなどを教えながら、父子二人で過ごすおそらく初めての長い時間を共有する。
山の郵便配達は重い郵便物を背負って険しい道を歩き、途中冷たい川を渡り、崖をよじ登り、民家に泊まってはまた早朝出かけていくという厳しい二泊三日の行程なのだ。

父は長年の激務で足を痛めていた。そして、今後このつらい仕事を継ぐ息子の、この先何年も自分自身と同じ経験をするであろうことを心配しつつも、一方では大切なこの役目を任せられるのは息子しかいないという気持ちも持っている。
一方息子は生まれた頃からずっと、仕事がら家にいることが少なかった父にどこかなじめないよそよそしさを感じ『お父さん』と呼ぶことが出来ない。

美しい山の風景がそんな父と息子を包み込むようで、その自然の中で彼等はぽつりぽつりと言葉を交わし、すれ違っていた気持ちや、知らなかった一面や、お互い知り得なかった母親の心の内をそれぞれ知って、新しい発見を重ねながら黙々と歩く。
ここで重要な役割を果たしているのが、父のお供で長年郵便配達に同行してきた犬の「次男坊」である。
このユニークな名前も、次男坊の表情や仕草もとても可愛い。
ひたすらどこまでも続く山道を歩く、二人と一匹の風景はそれだけで心が温かくなる。
そして、時折何もかもを解っているかのような表情を見せる次男坊。
その頼もしさが垣間見えるシーンもあって、これからはきっと息子の良きパートナーとなるであろうことを感じさせてくれる。

 父には最後の、息子にとっては最初のこの配達で、この仕事への強い責任感は父から息子へと受け継がれ、息子から父へはこれから村で母と共に過ごすための細やかな注意事項が語られる。

こうして、過酷な仕事を誠心誠意誇りを持って勤め引退していく一人の男の存在を知るのは、ごく限られた山の住人達ばかりであるし、山道での彼の孤独な苦労やつらさなどは誰一人知るものも無いのだろう。
ただただ、長い長い歳月暖かく厳しくそれを見つめていた山の自然があるだけだ。

与えられた使命を、例えそれが本当に目立たない地道な積み重ねであったとしても、誰かのためにコツコツと果たしていく人生。
それがいかに尊いことであるかを再認識させられる。

 山の緑と美しい川のせせらぎが、いつまでも心の中を洗い流しつづけてくれるような清々しい感動が残る作品だった。
 

[movietop]
2007/3/14


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