初恋のきた道
http://www.sonypictures.jp/archive/movie/roadhome/


監督 : チャン・イーモウ
出演 : チャン・ツィイー チェン・ハオ
 チャオ・ユエリン スン・ホンレイ
(2000年 米中合作)

 これは家でDVDで観て良かった、とつくづく思った。    
「おばあちゃんの家」と同じくらいに号泣してしまった。
どちらも、田舎の風景に素朴な心…というモチーフ。 私はこういうのに、ことのほか弱い。

 舞台は中国の美しい村。 そこに都会から青年が帰ってくる。
青年の父が急死したのだ。
家に着いてみると、母は、父が永年勤めた村唯一の学校の前に座り、そこを動こうとしない。
そればかりではなく、周囲をもっと困らせていたのは、 病院の霊安室で眠る父を家まで運ぶのに、伝統的なやり方で運ぶと言って聞かないことだった。
それは、車を使わず、担いで運ぶという方法だった。

このあたりまでの描写が白黒で続いた後、画面はカラーに変わり美しい村の風景と、18歳の母(チャン・ツィイー)の姿を映し出す。
そして、母と死んでしまった父との、村の伝説にもなった恋が、息子のナレーションで展開される。

この初恋物語は、人生の終わりは決してすべての終わりではないのだということを思い出させてくれる。
この村でこんなに一途な恋が生まれて、やっと成就し、40年の時を経て終わっていく…。
こんなふうにして人間は人を愛することを繰り返しながら、この世界を育んできたのだ。

 私がチャン・イーモウ監督の作品を初めて観たのは「HERO」だった。
正直言って期待はずれだった。
次に最近映画館で「LOVERS」を観て、ちょっと見直した。
そしてこの監督に興味を持つに至り、今さらながらにこの「初恋のきた道」を遡って観た。

主演女優、チャン・ツィイーの舞踏やアクションの才能は、この作品では全く披露されない。
当初、純朴な村娘の役(もちろん舞踏のシーンなど無く、ましてアクションなど全く縁がない)は、彼女にとって 宝の持ち腐れのような感じさえしながら観始めたが、 私のチャン・ツィイー感はがらりと変わった。
初恋の切なさを、こんなに可愛らしく、いじらしく演じられる女優(それは当時の彼女の年齢も関係有るのだろう)は、彼女の他に思い浮かばない。
そして観終わってみれば、この繊細な心理描写が出来るチャン・イーモウ、チャン・ツィイーのコンビが 「LOVERS」でそれを発揮していないことの方が余程もったいない気もする。
ただ、どの作品の中でも、彼女の演じる女性は心の中に火のような情熱を持っている。

この監督の持つ幾つもの引き出しが、今後どんな風に開き、そこから何が現れるのか、ちょっと楽しみでもある。


(2004/9/19)


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