シド・アンド・ナンシー
Sid and Nancy
監督 : アレックス・コックス
脚本 : アレックス・コックス 、アベイ・ウール
音楽 : ジョー・ストラマー
      ザ・ポーグス、 プレイ・フォー・レイン
   サウンドトラック「シド・アンド・ナンシー
出演 : ゲイリー・オールドマン(シド・ヴィシャス)
    クロエ・ウェブ(ナンシー・スパンゲン)
    ドリュー・スコフィールド(ジョニー・ロットン)
    トニー・ロンドン(スティーヴ)
    ペリー・ベンソン(ポール)
    デイヴィッド・ヘイマン(マルコム)
    アン・ラムトン(リンダ)
    スチュアート・フォックス(ロック・ヘッド)
    イギー・ポップ
    コートニー・ラヴ
(1986年 イギリス)

 不思議な存在感で、魅力的な悪役などを数々こなしている名脇役、ゲイリー・オールドマンの、これはメジャーデビュー映画だそうだ。
撮影にあたり、彼はウエイトコントロールをし、見事にパンクのカリスマ、シド・ヴィシャスになりきった。

70年代後半のロンドンではパンクロックが全盛期で、中でもセックス・ピストルズは、パンクの父と言われていた。
そして、セックス・ピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスと彼の人生は、パンクの代名詞と言っていいだろう。

 映画は、ニューヨークにあるチェルシーホテルの、シドとナンシーが暮らしていた部屋のシーンから始まる。
時は78年10月、その日シドは恋人のナンシーをここで殺害した。
呆然とナイフを握りしめ、つけっぱなしのテレビを見つめ続けるシドに、警官が話しかけるが彼には聞こえない。
外は群がるマスコミで大騒ぎになっている。
その中を、放心状態で車に乗せられ、警察に連行されるシド。
シド・ヴィシャス


そして、そこからシドの回想が始まる…という設定だ。

初めて出会った頃のナンシーは、シドが訪ねていったリンダの家にいたグルーピーだった。
彼らは急速に恋をし、ドラッグにはまり、落ちていく。
ナンシーは、セックス・ピストルズのメンバーからもマネージャーのマルコムからも疎まれ、マルコム達スタッフはナンシーを遠ざけようとする。
しかし、この二人を引き離すことは誰にも出来ず、バンドもだんだんぎくしゃくし始める。
そして、ドラッグのため演奏がまともに出来なくなったシドのもとを、メンバー達は離れていく。
バンドは崩壊。
シドは神経衰弱に…。
孤独なシドとナンシーの部屋を訪ねてくるのは、もう麻薬の売人くらいなものだった。

ナンシーとシド
 映画の中では、当然セックス・ピストルズの曲が何曲もかかるが、ジョニー・ロットン役のドリュー・スコフィールドや、シドの前にセックス・ピストルズのベーシストをつとめていたグレン・マトロックなどが演奏している。
そして"My Way" "Somethin' Else"などをシド役のゲイリー・オールドマンが歌っている。 
また、"I Wanna Be Your Dog" というイギー・ポップの曲も歌われている。
劇中、ゲイリー・オールドマンが首にかけているかの有名なシドのチェーンネックレスは、実際にシド・ヴィシャスがつけていた本物だそうで、この映画でシドを演じるにあたってゲイリー・オールドマンがリサーチをしている時に、シドの母親が貸してくれたという。

 パンクは商業的に作られたムーブメントといわれているが、そう考えれば悲しいことに、シドはそれに翻弄され利用された人生だったのかもしれない。
でも、結果的に彼がこれほど多くの人達、ミュージシャン、文化、に影響を与え続けるとは、当初誰も予想していなかっただろう。

 孤独と絶望の中で、どうにかして生きる希望を見いだそうともがき苦しみながらも、シドは、口論の挙げ句ナンシーを刺殺し、その数ヶ月後、まるで彼女の後を追うかのように、ヘロインのオーバードースによって、21歳でこの世を去る。

 
(2005/6/3)
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