スモーク・シグナルズ
SMOKE SIGNALS
http://www.nhk.or.jp/sun_asia/sundance/j/1996_02.html
監督 : クリス・エアー 
原作・脚本 : シャーマン・アレクシー
音楽 : B・C・スミス
出演 : アダム・ビーチ(ヴィクター)
  エヴァン・アダムス(トーマス)
  アイリーン・ベダード(スージー)
  ゲイリー・ファーマー(アーノルド)
  タントゥー・カーディナル(アーレン)
(1998 米)

 ネイティブ・アメリカンのスタッフが監督、脚本、主演をてがけた初の作品だそうだ。

1988年、アイダホにあるインディアン居留地…、ヴィクターと母に知らない女性から電話がかかってくる。
それは、10年前に突然家を出たきり音沙汰の無かった父アーノルドの死を知らせる電話だった。
遠くアリゾナで死んだ父の遺灰をとりに、ヴィクターは幼なじみのトーマスとともに旅立つこととなる。
彼等二人にとって、生まれて初めて居留地を出る旅だった。

母と自分を捨てた父アーノルドに対する恨みや憎しみ、そしてそれに相反する愛情。
幼い頃から父を慕う友人トーマスに対する嫉妬や苛立ち。
それら屈折した思いを抱えたヴィクターと、彼の心を知ってか知らずかアーノルドの昔話ばかりを楽しげに繰り返すトーマス。
ヴィクターとは違い、トーマスはアーノルドに対する親愛の情をストレートに表現するし、いつも飄々としていて、明るく自然体に見える。
それがまたヴィクターの神経を逆なでするのだ。
トーマスを演じるエヴァン・アダムスがこの役にぴったりで、あどけない笑顔の中にどこか悟ったような表情をかいま見せる。

 アーノルド役のゲイリー・ファーマーは、「デッド・マン」で"ノーボディー"という面白い名前のインディアン役をやっていた役者さんだ。
ヴィクターが幼い頃、アーノルドが彼に「おまえの一番好きなインディアンは誰だ?」とたずねるシーンがある。
反抗的なヴィクターは「好きなインディアンは、いない(nobody)」と答え、その答えに不満なアーノルドが繰り返し問いただすと、幼いヴィクターが「Nobody! Nobody!」と何度も叫ぶシーンがある。
製作年代は「デッド・マン」よりこちらの方が後なのでもしかしたら「デッド・マン」をリスペクトしてのことだろうか、それとも全くの偶然なのだろうか。

アリゾナに着いた二人は、電話をかけてきた女性スージーと会う。
彼女から生前の父の話を聞きながら、父の心に少しずつ近づいていくヴィクター。

こころ暖まる、それでいてカラッとした爽快感を残す映画だ。
ラストのトーマスのナレーションは、どことなくネイティブ・アメリカンの香りがし、深く考えさせられる詩だ。

 なんとなく父に宙ぶらりんな気持ちを抱いたまま今に至る、…または、そんな気持ちのまま父を失ってしまった…という人には、一見の価値がある素敵な作品だと思う。
(2006/6/28)
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