そこのみにて光輝く
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監督: 呉美保
原作: 佐藤泰志
脚本: 高田亮
音楽: 田中拓人
出演: 綾野剛  池脇千鶴  菅田将暉  高橋和也  火野正平 
    伊佐山ひろ子  田村泰二郎
(2014 日本)



男は彷徨っていた、生きる場所を探してー
女は諦めていた、生きる場所をさがすことにー


 

  佐藤泰志原作の長編小説の映画化である。
函館に生まれた作家で、1980年代に芥川賞を始め数々の賞候補に上がりながらも受賞は逃している。
唯一の長編がこの作品で、三島由紀夫賞の候補となった。
その後彼は、1990年41歳の時、自らの命を断った。


朝日新聞の記事で、なぜ今佐藤泰志が注目されているのか・・・その理由を、今この時代の感覚に、彼の作品の「閉塞した空気感」が合っているのではないか・・・と分析していた。

冒頭から、この映画の背後には重い閉塞感がずっと流れている。
主人公、達夫の狭いアパートと、千夏と家族が住む海辺のバラック。
達夫も千夏も、その弟の拓児も抜けられるあてのない暗い迷路をただひたすら歩き続けるかに見える。
どんなつらい日も、やりきれないほど無気力になった時もひたすら。

けれど、そんなふうに見える彼らが、絶望と裏腹の、逞しく輝く光を奥深くに秘めていることが解ってくる。
それは、むしろ悲しくも見えて、こういう残酷さ・・・、そうだった若いっていうのはこんなことだったな・・・と甦る記憶に息苦しくなる。

とりわけ、大城千夏の弟である拓児のピュアな明るさがキラキラしている。
それだからこそ、追い詰められていってしまう彼の姿は、苦しくて見ていられなくなるほどだった。



 平日の夜の有楽町の映画館はほぼ満席だったけれど、エンドロールが終わるまで殆どの人が立とうとしなかった。
私も、すっくと立ち上がり帰路やこの後の夕食のことにすぐに気持ちを切り替えることは全く出来そうもなかったので、それは有り難かった。


 それにしても、池脇千鶴は凄い女優さんだなぁと思う。
圧倒的な存在感だ。
そして私は正直、綾野剛目当てだったのだけど、この映画のもう一つの収穫は大城拓児役の菅田将暉だった。
彼はきっともっともっと良い俳優さんになっていくんじゃないかと思う。

 

(2014/4)


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