監督: ウベルト・パゾリーニ
脚本: ウベルト・パゾリーニ 音楽: レイチェル・ポートマン 出演: エディ・マーサン ジョン・メイ ジョアンヌ・フロガット ケリー カレン・ドルーリー メアリー キアラン・マッキンタイア ジャンボ アンドリュー・バカン プラチェット氏 ニール・ディスーザ シャクティ ポール・アンダーソン ホームレスの男 ティム・ポッター ホームレスの男 (2015/01)
ジョン・メイはロンドン市の民生係で、彼の仕事は「ひとりきりで亡くなった人を弔う」こと。 彼もまた孤独で単調な日々を送る几帳面な地方公務員だが、誠実な彼はこの仕事に真摯に向き合い、そしてやりがいも価値も見出していた。 簡単に事務的に済ますことも出来る仕事も、心をこめてひとつひとつ行っていく彼の様子は、冒頭の牧師さんと二人だけの静かなの葬儀のシーンに表されていて、牧師が読み上げる実に手作り感あふれるおみおくりの言葉(おそらくジョン・メイが亡くなった人々の生きた記録を丁寧に集めて紡ぎだした言葉なのだと思う)と、ちょっとコミカルでもあるその様子にまず心をつかまれる。 そしてジョン・メイという一見風変わりに思える人物の魅力に引き込まれてしまう。 ある日のこと、彼は上司から人員整理による突然の解雇を告げられる。 でもその時、彼にはやりかけていた仕事があった。 ビリー・ストークという老人のおみおくりだ。 ビリーはジョン・メイの向かいに住んでいた孤独な老人だ。 そのことを知った時、ジョン・メイは彼のことを全く知らなかったことに少なからずショックを受けた。 彼はビリーの弔いを最後までやり遂げたいと上司(「死者に思いなど存在しない」と言い切ってしまう合理主義の若造である)に頼みこむ。 この最後の案件を彼は無給でやるのだが、その仕事の中で彼はビリーの人生をなぞりながら次々とビリーと接点のある人々を訪ね旅をする。 なかなか破天荒な人生を送った…ある意味ジョン・メイとは対照的な…ビリーの人生のステージにはジョン・メイとは無縁だったような人々がたくさん登場しそれらの人々との関わりがジョン・メイ自身をも変化させていく。 その様子が時にコミカルにあたたかく描かれているのがこの作品の大きな見どころである。 監督は自身が読んだ実際の記事に着想を得て実在のロンドン市の民生係に同行し取材し、この作品を誕生させた。 ラストには、意外な結末が待っている。 涙が止まらず、でも最後には優しく希望に満ちた気持ちにさせてくれる。 泣き顔で、こそこそと映画館から冷たい風が吹く夜の街に出て行った時、心のなかがすっかり温まってホコホコになっていることに気づいた。 ほんとうに素敵な作品です。 [movie top] |