SWEENEY TODD: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET http://wwws.warnerbros.co.jp/sweeneytodd/ http://www.sweeneytoddmovie.com/ (English) 脚本 : ジョン・ローガン 作詞作曲 : スティーヴン・ソンドハイム (サントラスウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師) 出演 : ジョニー・デップ (スウィーニー ・トッド) ヘレナ・ボナム=カーター (ミセス・ラベット) アラン・リックマン (ターピン判事) ティモシー・スポール (バムフォード) サシャ・バロン・コーエン (ピレリ) エドワード・サンダース (トビー) ジェイミー・キャンベル・バウアー ローラ・ミシェル・ケリー ジェイン・ワイズナー (2007 米) 前もってあまり情報を持たずに観た映画だったのだが、終わってみて呆然自失。 頭の中身が凍り付いて停止してしまったような気分だった。 この監督の持つ独特な世界観のひとつには、コミカルさの中に織り込まれている怪しげなホラーの要素やダークなエッセンスのようなものがあるけれど、これはそれらの部分をさらにさらに発展させて洗練させたような内容だ。 『チャーリーとチョコレート工場』のコメディに包まれたブラックユーモアは、覆いを取り除かれてそのままの形で観客の目の前に露骨に突きつけられる。 どのくらい露骨かと言うと、R指定になるくらい…である。 そもそも舞台作品としてブロードウェイで上映されていて、トニー賞なども受賞している作品だそうだ。 日本では2007年1月宮本亜門演出、市村正親主演で上演されている。 舞台の方は一体どんな演出だったのか…こちらも是非見てみたかった。 とにかく映画の方は今作も徹底した完成度の高さで、ティム・バートンワールドに思う存分浸ることのできる本当に贅沢な作品になっている。 物語の背景は19世紀のロンドン、フリート街。 街の権力者タービン判事の陰謀によって無実の罪で15年もの間投獄させられていた男が、この街に帰ってくる。 復讐を誓い、名前も変えて生まれ変わったスウィ・ニー・トッドだ。 愛する美しい妻は夫を失い毒をあおり、一人娘はタービンに軟禁されたまま。 かつての幸せだった妻と娘との日々を描く回想シーンは華やかで美しいセットとカラー映像で描かれるが、それとまったく対照的に、現在のフリート街は極力色を抑えたセットや登場人物の衣装、そしてスウィーニー・トッド達もバンパイアのようなメイクで登場する。 街に戻ってきたスウィーニーは、まずかつて彼が住んでいた家を訪ねる。 そこの一階では大家であるミセス・ラベットがパイ屋を営んでおり、彼は以前のようにその二階で理髪店を再開した。 このミセス・ラベットを演じているのがティム・バートン監督の奥様でもあるヘレナ・ボナム・カーターで、この作品の撮影中彼女は第2子を妊娠中だったそうだ。 (彼女によると、そのために撮影時期によって『胸のサイズがフィルム中で顕著に変化している』…らしいというトリビアも。) 予想以上に素晴らしかったのはジョニー・デップの歌唱力。 音楽と歌の部分は撮影前に録音されていて、それに合わせての演技だったそうだが、まったくその時間差を感じさせない音楽と映像の合致。 すごい職人技だった。 さすがロックバンドのギタリストだった人…彼の中に眠っているロック魂が垣間見えて、この役にぴったりだ。 残虐非道だが、その復讐心の核には純粋な愛を秘めているナイーブな男の歌声。 表情も変えずに人を殺す彼の行動の後ろには、悲しいほど人間くさい弱さがある。 それ故に起きてしまう悲劇…ここまで救いようのない物語にもかかわらずこの主人公が150年もの間観客の心をつかみ続けているのも、そういうキャラクター故なのだろう。 |
(2007/1/22) [movietop] |