東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
http://www.tokyotower-movie.jp/
監督 : 松岡錠司
原作 : リリー・フランキー 『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
脚本 : 松尾スズキ
音楽 : 上田禎
出演 : オダギリジョー (ボク)
  樹木希林 (オカン)
  内田也哉子 (若い頃のオカン)
  松たか子 (ミズエ)
  小林薫 (オトン)
  渡辺美佐子 (筑豊のばあちゃん)
  佐々木すみ江 (小倉のばあちゃん)
  寺島進 (ハイカラな男)
  仲村トオル (ラジオ局のディレクター)
  小泉今日子 (不動産屋の事務員)
(2007 日本)

   リリー・フランキーの自伝小説で、ベストセラーとなった同名の作品を映画化したものだ。
テレビでも放映していてご存知の方も多いと思うが、私は原作者のリリー・フランキーにオダギリジョーは一番雰囲気が近かったと思う。
今回私が映画館に足を運んだ一番の理由は、そのオダギリジョーと、樹木希林、内田也哉子というキャスティングに惹かれて…だった。

特に、気になる女優さんの一人でもある樹木希林と、内田也哉子母子の演技にはとても興味があった。
内田也哉子さんは、もっくんの奥様としても樹木希林・内田裕也夫妻の娘さんとしても知られているが、本格的な演技は本作が初めてだそうだ。

 内容はもう書くまでもないが、著者リリー・フランキー(ボク)の幼少時代から、東京に出てきて一人前になる頃までの、前向きな母親(オカン)と時々登場する風変わりで頼りないがどこか憎めない父親(オトン)と、それを取り巻く人々とのお話だ。
若い頃のオカンを内田也哉子が演じているのだが、彼女の演技がとても自然でさりげなく、それでいて個性的で、「何か」貴重なものを持っている女優さんだなぁと思う。
中年以降からのオカンを引き継ぐ樹木希林との繋がりも本当に違和感が無いあたり、さすがに実の親子だなぁと思うし、彼女の存在感と演技が後半樹木希林が演じる数々の素晴らしいシーンの布石となっている。
そのあたりの裏話がオフィシャルサイトの「撮影日誌」に書かれていて大変興味深い。
ともかく、このキャスティングを思いついた人に拍手…だ。

他のキャストもチョイ役に「あっ」と思うような人が出てきたりしてなかなか面白い。
ボクが東京でアパートを借りるときの不動産屋役を小泉今日子がやっていたり、ラジオ局のディレクターに仲村トオルが出ていたり。

 この作品の主人公にみんなが自己投影してしまうのは、決して親孝行息子でもなければ、かといって悪い息子でもない、主人公の平凡さにあるのだろう。
母思いではあるのだけれど結局心配ばかりかける。
嘘をついて貴重な仕送りを無駄にしたり学費を使い込んでしまったり、そして留年したり。
優しくて情けなくて、そんなボクにどこか自分自身の本音と重なる部分がある…と感じる人が多いのではないだろうか。
オカンにしても、決して模範的な母というわけではない。
けれど、長いこと苦労してきただろうオカンは、そんな気配をみじんも感じさせない大らかさ明るさがある。
それがオカンの強さだ。
そして何より、オカンの愛情の深さがこの作品の軸になっている。

映画館に見に行かれる方は、是非ハンカチとティッシュの用意を…。
142分の上映時間はとても短く感じられた。




 


2007/4/18


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