監督 マシュー・ブライト 出演:ナターシャ・リオン(クリスタル) マリア・セレトニオ(サイクローナ) ヴィンセント・ギャロ(シスター・ゴメス) (1999米) ====================================================== まずはモラルなどというものを忘れて、このB級っぽさを楽しむつもりで見た方がいいと思う。 売春強盗(トリックベイビー)で捕まった16歳のクリスタルと、 そのクリスタルが入った医療少年院で知り合った同い年のサイクローナの、 滅茶苦茶で行き当たりばったりのロードムービーだ。 汚い言葉のオンパレードに殺人、暴力…そして血とゲロ。 クリスタルは過食嘔吐を繰り返す摂食障害を持ち、一方サイクローナは幻聴とともに生きている。 サイクローナは16歳にして終身刑、何故なら家族を皆殺しにして服役しており、クリスタルの家族は全員刑務所の中。 この二人の女の子はかなり残酷な環境を生き抜いてきて、そのせいで現在も深刻な問題を抱え、未来の見通しも暗い。 しかし、同情をする余地もないくらいに彼女たちのキレっぷりとイカレっふりは凄いパワーで、あきれて引いてしまうか楽しめるか、ギリギリのところだろう。 そんな二人が医療少年院から逃げだし、旅をしながらサイクローナの崇拝するシスター・ゴメスのもとに向かう話なのだが、そもそもクリスタルにはこのシスター・ゴメスが実在するのかサイクローナの病気による幻覚なのかも解らない。 さすがのクリスタルも、次々と簡単に人を殺してしまうサイクローナには腹を立て、薬を飲んでいないと幻覚に振り回されてしまう事にも手を焼いている。 しかしサイクローナはレズビアンでクリスタルを好きなので、クリスタルの言うことには耳を傾けるし、薬も嫌々飲む。 当初、まったく相手にされないサイクローナだったが、旅を続け、様々なピンチを共に切り抜けるうちにクリスタルはサイクローナを愛おしく思うようになる。 同時に観ている側も、この二人をなんとなく魅力的に思うようになるだろう。(最初に拒否反応を起こしてしまうとそれっきりだが) それは、彼女たちの逞しさとあっけらかんとした生き方に、ちょっとだけうらやましさを感じてしまうからかもしれない。 あえて「社会の裏側」という言い方をすれば、その裏側で通用するのはこういう逞しさや知恵なのだろう。 この映画は一貫してその裏側から表を見ている。 彼女たちの住む世界から見れば、表側のルールなどは嘘にまみれていてあてにならない。 社会は自分たちを守ってはくれないし、むしろ守ってくれるべき大人にさんざん利用されて生きてきたわけだから、隙あらば今度は逆に盗れるものは盗ってやれというのも正論のような気がしてくる。 そうして、ようやくたどり着いたシスター・ゴメスの住処。 シスター・ゴメスは実在した…女装のヴィンセント・ギャロ登場である。 私はギャロ目当てでこの映画を見たのだけど、彼の出番は後半だけ。 しかもこの役は…。 まあ、初の女装ギャロが見られたので良いけれど、かっこいい彼が見たかった人は失望するかも…。 この映画、同じ内容を限りなくシリアスな方向に追求していくと、『モンスター』になるんじゃないかな…などと思った。 |
[movietop] 2005/3/16 |