トリコロールに燃えて
HEAD IN THE CLOUDS
http://www.gaga.ne.jp/tricolore/
監督・脚本 : ジョン・ダイガン 
音楽 : テリー・フルーワー
 
出演 : シャーリーズ・セロン(ギルダ)
  ペネロペ・クルス(ミア)
  スチュアート・タウンゼント(ガイ)
(2004  アメリカ/イギリス/スペイン/カナダ)

  シャーリーズ・セロンにとっては、「モンスター」の次の作品になると思うのだが、またしても別人…というかすっかり元の美しくてスリムなシャーリーズ・セロンに戻っている。
この映画の時代背景は1930〜1940年代にかけて。
芸術家たちが集う華やかなパリや、スペインの内乱、第二次世界大戦という波乱に富んだ時代を、自由に奔放に生きた女性ギルダを中心に、彼女の魅力の虜になった男ガイと、足の負傷でダンサーの夢をたたれた看護士のミアの3人の恋と友情が描かれる。


 ミアは、そのつらい過去を胸に秘めていて一方ギルダは少女時代に出会った占い師によって自分の人生が34歳で終わることを知らされている。
それぞれの悲しみを抱えた彼らの奇妙な同居生活は、享楽的だが、どこか危うく、そして純粋でもある。
自分自身の寿命を知っているという運命が、ギルダの人生観、生き方に大きな影響を与えているのだが、彼女は運命論者でありながらも決して冷め切っているわけではなく情熱的な女性だ。
心の奥底には深い孤独を抱え、一方では自分でももてあますほどのあふれる愛情を抱えている。
それ故の非凡な人生、ひときわ人目を引く行動、魅力的な存在…となるのだろう。
それはまた逆を返せば、人々の憎悪の対象やはけ口になるような、象徴的な存在にもなりうるわけだ。
自分の感情に正直に生きることは難しく、特に戦争を背景とする時代においては勇気のいることでもある。
人目をはばからず、つまらない常識にとらわれず率直に感情を表現する彼女の純粋さは、その時代のその場所の常識では「売女」と呼ばれるような行為であったりもする。
こういうタイプの女性は、時代を超え国を越えて多くの人々の神経を逆なでし、嫉妬心を煽るのじゃないだろうか。
周囲の目を気にして無意識に自分の人生を型にはめてきた多くの人々は、その嫉妬と苛立ちを別の理由にすり替えて、『社会的制裁』の名の下に彼女のような人々を罰しようとする。

 ガイを演じたスチュアート・タウンゼントは、「クイーン・オブ・バンパイア」で思いきり不健康で美形なドラキュラを演じていたのがお気に入りだったのだけど、この役はまたまったく違うイメージ。
ミアを演じたペネロペ・クルスに関しては、個人的に、かつて見たどの映画よりこの役の彼女が好きだ。



(2005/11/?)



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