Waiting in the Dark http://www.phantom-film.com/library/site/kuraitokorode/ http://www.kuraitokorode.com/ 監督 : 天願大介
原作 : 乙一 暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫) 脚本 : 天願大介 音楽 : めいなCo. オリジナル・サウンドトラック「暗いところで待ち合わせ」 出演 : 田中麗奈 (本間ミチル) チェン・ボーリン (大石アキヒロ) 井川遥 (三島ハルミ) 宮地真緒 (二葉カズエ) 岸部一徳 (ミチルの父) 佐藤浩市 (松永トシオ) (2006 日本) 乙一の小説は好きだ。この「暗いところで待ち合わせ」は私が初めて読んだ乙一作品だった。 意外な方向に展開するストーリー、ミステリーでありながら深く繊細な心理描写に重点が置かれた文章。 そしてハラハラどきどきから、切なく優しい気持ちになって終わる物語の構成。 作品全体に終始一貫して流れる静かで緩やかで淡々とした透明感。 それら乙一作品の素晴らしいところすべてがこの映画に反映されている。 天願監督は、かの有名な今村昌平の息子さんだそうで、同監督の作品では脚本なども手がけている人だ。 また、寺山修司監督の作品に美術スタッフとして参加したり…という経歴も持っているそうだ。 主演の田中麗奈とチェン・ボーリンの演技が、この作品の雰囲気にとてもよく合っていて、特に盲目のミチル役を演じた田中麗奈は原作のイメージを壊すことなく乙一ワールドを大切に表現してくれていると思った。 彼女が一人で暮らす家に、警察に追われて逃げ込むアキヒロを演じたチェン・ボーリンもまた、鋭いけれど優しく悲しげなまなざしで孤独な青年の心の変化を表現していた。 徐々に家の中に違和感を感じ、アキヒロの存在に気づいていくミチルの様子を、サスペンスとして恐怖をあおるのではなく、むしろ2人の不思議な交流にスポットを当てあたたかく丁寧に描いている。 極端に少ないセリフの中でも彼等の小さな心の動きにどんどん引き込まれ、いつしか心を捕まれてしまう。 そして小説同様、見終えた後に残る優しく切ない気持ち。 きっと天願監督も乙一作品のファンなんだろうなぁ…、と感じられる。 熱心な乙一ファンもきっと納得するだろう映画に仕上がっていると思う。 |