闇の子供たち
http://www.yami-kodomo.jp/
監督: 阪本順治
原作: 闇の子供たち (幻冬舎文庫)    梁石日
音楽: 岩代太郎
出演: 江口洋介 (南部浩行)
 宮崎あおい (音羽恵子)
 妻夫木聡 (与田博明)
 プラパドン・スワンバーン (チット)
 プライマー・ラッチャタ (ナパポーン)  豊原功補 (清水哲夫)
 鈴木砂羽 (梶川みね子)  佐藤浩市 (梶川克仁)
(2008/日本)
         

  見終わってなんだか釈然としない感じが残った。
一番大きな理由はラスト・・・それはネタバレ以降で・・・ということにして、まずは主要登場人物たちそれぞれに対し、少しずつ感情の動きや行動の矛盾点を感じてしまうことが原因だろう。

子どもの臓器売買という闇に包まれたテーマを扱ったこのストーリーは、それを取材し暴こうとする南部という新聞記者を中心に進んでいく。
彼の熱心な取材と真実を知り伝えることに命を懸ける記者魂、それに対し目の前にいる子供たちをまず救おうとするあまり感情に走ってしまう福祉ボランティアの恵子、そして最初は嫌々ながらではあるがこの現実に関わっていくにつれて心境の変化を見せていくフリーカメラマンの与田。
三人三様のこの問題に対するスタンスはどれもみな解りやすく象徴的で、よく出来た人物設定であると思う。
そしてそれぞれの考え方や思いや心の動きには、共感できる説得力があることも確か
だ。
なのに違和感を感じるのは、やはり映画の作りや脚本のせいか・・・。
途中気持ちが入り込めない辻褄の合わなさをいくつか感じるし、それは映画のラストに近づくにつれて強くなり、見る側の感情をぽつんと置き去りにしたまま突っ走って行ってしまったかのような感覚に陥る。

 しかし、あまりに重い現実を目の前に突きつけ、問題提起してくるやりきれない作品だ。
そして役者さんたちもそれぞれ好演している。
南部たちの取材が真実に近づくにつれ、問題は臓器売買のみならず幼児売春にまで発展し、その背後にある闇のルートの実態と組織的な犯罪が姿を現す。
恵子のような一ボランティアの熱意ではどうにもならない厚い壁が、そこにはある。
そしてその闇組織の一員には、かつては被害者であり、心の中に怒りと憎しみを抱えている男がいる・・・という、このような問題の奥深さを物語る一面もリアルに描かれている。

 多くの人にとっては、普段の生活の中で臓器売買や幼児売春について考える機会などあまり無いことだと思う。
だからこそこのような現実に社会が目を向けるきっかけを作るにはやはり映像の力、映画という媒体は効果的だろう。
この小説(原作は梁石目)を映画化することの難しさを、乗り越えた意義はとても大きいはずだ。

(2008/9/17)
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==================ここからネタバレ=====================























 ラスト、銃撃戦からあとの展開がどうしても腑に落ちないまま映画館を後にした。
南部が実は幼児売春の加害者側でもあった過去を持ち、記者としての自分との狭間で耐え切れなくて自殺を図る・・・恵子の手をつかんだことによって起きたフラッシュバックのシーンから後、どう考えてもそういう解釈になるのだが、あえて原作に無かったその設定を新たに加えた監督の意図がわからない。
そして、帰宅後調べて読んだ監督のインタビューには、このエピソードを加えることによって、この問題をより身近に感じてほしかった・・・という内容のことが書かれていた。
そうなのだとしたら、その試みは逆効果ではなかったかと思う。
少なくとも私は、このラストを見ることでそれまでの人物描写で感じた気持ちの流れを絶たれてしまうような感覚を覚えた。
この映画の価値を考えると、そのことが残念でならない。

それともうひとつ、サザンオールスターズは好きだけれど、この映画のラストでしかも歌詞の字幕入りで・・・というのは、なにかぶち壊しの気がするのだが・・・。

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