きみに読む物語
http://www.kimiyomu.jp/


監督 : ニック・カサヴェテス

出演 : ライアン・ゴズリング(ノア)、
     レイチェル・マクアダムス(アリー)、
     ジェームズ・ガーナー(老紳士)、
     ジーナ・ローランズ(老婦人)、
     ジョアン・アレン、
     サム・シェパード、
     ジェームズ・マーズデン
(2004年 米)


 ある施設で生活する老婦人。
美しい人だが、どこか暗くうつろな表情をしている。
そこに陽気な老紳士が訪問する。
彼は、本の読み聞かせをしに来ているらしい。
介護スタッフの勧めで、読み聞かせを聞き始めた老婦人。
彼が持っている本の物語の内容は、1940年の夏に南部の田舎町を舞台に繰り広げられる、若いカップルのロマンスだった。
それは、材木置き場で働くノアという青年が、都会から休暇を過ごしに来ていた令嬢アリーに一目で恋に落ちてしまうシーンから始まった。

まるで「フライド・グリーン・トマト」のように、物語と現実とが同時進行していく。
老婦人は、次第にお話の世界に引き込まれ夢中になり、無邪気な子どものように結末が気になって仕方ない。
何故なら、物語の中の若いカップルの前途には家柄の違いという、当時にしては大きな障害が横たわっており、彼らはそれに翻弄されていくのだ。
夏が終わり、強引に引き離されたアリーにノアが一年間毎日書き続けた手紙は、アリーの母親の手元にたまっていき、アリー自身に渡されることはなかった。
ノアは365通目の手紙で、アリーに別れを告げる。
手紙のことなど何も知らず苦しむアリーと、どうしても彼女を忘れることが出来ないノアに、それぞれの月日が流れ、やがて戦争が起き、そして数年ぶりに再会出来た時、アリーは結婚を目前に控えていた。
それは家族にも一族にも祝福された、裕福で申し分ない家柄の優しい紳士との結婚だった。

「この話は、以前聞いたことがあるわ。それも何回も。」
ふと、怪訝な顔をする老婦人。
彼女は、アルツハイマーを患っていたのだ。
では、この老紳士は…ノア?
ならば、この老婦人は、物語の今後は…?
そんなことを思いながら、ワクワクと見続けているうちに、徐々にすべてが明らかになる。

一生一人の女性を愛し続けた男性の、深い思いと、読み聞かせに込められた真実。
奇跡のような二人の男女の一生。

けれど、この物語は原作者ニコラス・スパークスの祖父をモデルにしたお話だそうだ。
ニコラス・スパークスは「メッセージ・イン・ア・ボトル」の原作者でもあるが、この「きみに読む物語」(原題「The Notebook」)がデビュー作である。

派手な展開のない、少しベタな感じすらするようなお話であるが、皮肉な視点もささくれだった心もすべて忘れて、2時間ちょっとロマンティックな世界に思い切って飛び込むといい。
そうすれば、見終わる頃には、決してこれが非現実的な夢物語ではないように思えてくる。
愛はどんな障害も越えるとか、愛の力とか、愛の奇跡とか、そんなくすぐったい言葉が再び新鮮なリアリティを持ってよみがえるだろう。

 

 
2005/3/2
[movie top]

inserted by FC2 system